つながるクルマの有料サービスはニーズある? 「黒字化は当分先」:モビリティサービス
IDCジャパンは、日本国内のコネクテッドカー関連サービスのユーザー調査の結果を発表した。
IDCジャパンは2018年2月22日、東京都内で説明会を開き、日本国内のコネクテッドカー関連サービスのユーザー調査の結果を発表した。
個人と法人を対象に、サービスの契約や利用の意向を調査した結果、有料でも利用したいという回答が最も多かったのは、運転時の安心安全に関するサービスだった。反対に、音楽や映像、ニュースの配信、走行場所や乗員の好みに合わせた情報提供を行うインフォテインメントサービスは有料でも利用するという回答が少なかった。
IDCジャパン コミュニケーションズグループ リサーチマネジャーの敷田康氏は「コネクテッドカー関連のサービスで本格的におカネが入ってくるようになるのは2020〜2021年頃で、黒字化はさらに先になるだろう。ただ、どの自動車メーカーも、今すぐ黒字化できなくても、走りながら考えて取り組んでいく分野になっている」と語った。
有料でも使いたい人は機能によって2〜4割
調査は2017年11月にWebアンケートの形式で実施した。個人は「月に数回以上運転する」「コネクテッドカーに興味があり、購入や利用を検討する」という2項目に回答した500人を対象とした。法人の回答者は、物流や旅客輸送の企業の他、営業車を利用する企業も対象とし、「業務として月に数回以上運転する」「業務で運転する従業員を管理する」「社有車の管理を担当する」「経営者・部門担当者」のいずれかに該当する500人を選出した。いずれも年齢層は20〜69歳。
コネクテッドカーを利用する目的について、個人ユーザーの73.6%がより安全な運転を行うためと回答した。次いで、71.4%が目的地までより効率よく移動するという項目を挙げた。移動を楽しむためのインフォテインメントサービスや盗難防止、ロードサービスや自動通報といった目的を回答したのは3割超で、上位2項目から大きく差がついた。
各種サービスの利用意向については「有料でも契約を検討する」「無料であれば利用する」「無料でも利用しない」という3つの選択肢から回答させた。個人ユーザーで有料でも契約を検討するという回答が34.2%と最も多かったサービスは運転時の安心安全サポートだった。効率の良い移動の支援が27.2%、車両の遠隔診断や故障の通知が22.4%と続く。一方、インフォテインメント関連は14.0%、移動中に仕事ができるようにするサービスは11.0%、車内で買い物や予約、電子決済を済ませるサービスは9.4%にとどまった。
法人ユーザーの回答も個人ユーザーと同様の傾向だった。各種サービスの利用意向では、運転時の安心安全サポート、効率の良い移動の支援、車両運行管理、車両の遠隔診断や故障の通知といった項目で、「有料でも会社は契約を検討すべき」という回答が2割を超えた。敷田氏は「2割というのは低いと思われるかもしれない。しかし、既に多くの企業がさまざまな形で車両運行管理を採用している中でも関心を寄せられているということは、ビジネスチャンスに期待できるのではないか」とコメントした。
コネクテッドカーの購入や利用に伴う不安として、個人ユーザーの65.8%が、車両価格にコネクテッドカー関連のサービスコストが上乗せされるのを懸念していることも分かった。通信料がかかることや、サービスの利用料金が増えることも、6割前後の回答者が不安要素として挙げた。セキュリティに対する懸念を回答したのは4割以下にとどまる。法人ユーザーでは、58.8%が費用対効果が明確でないことを不安要素として回答した。
これらの結果から、敷田氏はコネクテッドカー関連のサービスで収益を期待しやすいのは運転時の安心安全サポートであると分析。サービスプラットフォームの構築では安心安全サポートを付加価値化できる技術の採用が必要であるという。また、データ通信を担う車載機などコスト低減や、通信費用の負担の在り方の議論も必須となると説明した。
ライドシェアはドライバーの「質」に不安
ライドシェアの利用意向やユーザーの不安についても調査を実施した。回答者は上記調査の個人ユーザー500人だ。7割近い回答者が、一般ドライバーが運転する自家用車に乗るライドシェアサービスの利用を検討している。一方、ドライバーの運転スキルや接客態度、移動経路の知識に対する不安を挙げる回答も多く寄せられた。ライドシェアサービスの展開に当たってはドライバーを評価する仕組みが欠かせないと敷田氏は説明した。ユーザーによる評価だけでなく、運転データなど客観的な指標を用いた評価も必要だとする声が多かったという。
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