中堅中小製造業がIoTで成果を出すために必要なもの:中小製造業のIoT(2/2 ページ)
課題とされる中堅中小製造業のIoT活用だが、活用を広げるためには何が必要か――。オートメーションと計測の先端技術総合展「SCF2017/計測展2017 TOKYO」では、「中堅・中小製造業のIoT導入ユースケース紹介」をテーマにパネルディスカッションが開催された。
中小金型メーカーはIoTで何を得るのか
O2やXrossvate、IBUKIの3社の代表取締役である松本氏は現在、IBUKI(金型加工業、山形県河北町)をグループを挙げて支援している。
「IBUKIは日本に多数ある年商が一桁億円の小企業だ。こうした規模の会社がIoTにどう取り組んでいくか切実な課題となっており、その中でわれわれは実績を作りたいと考えている」と松本氏は取り組みの理由について語る。そして現在、3つの課題に取り組んでいることを紹介した。
IBUKIは前身が安田製作所といい、ピーク時には従業員が300人程度の中堅領域に踏み込む製造業だった。しかし、その後、経営が傾き、ファンドからファンドに身売りされるなどの厳しい経営状況が続いた。その状態から松本氏が株式を買い取り、改善を進めたところ、現在は3期連続で黒字を達成するなど経営状況が大幅に改善しつつある状況だ。
松本氏によると「業績が回復したポイントは3つある」としている。1つ目は「全くリストラを行わずに、従業員の潜在能力(やる気)をフルに引き出す経営」、2つ目が「若者・バカ者・よそ物を生かす経営」、3つ目が「道具に魂を込める経営」だという。
その3つ目の道具というのが「AI(人工知能)を活用した自動見積もりシステム」「設計しながら学べるIT」「スマホで技術伝承」「熟練者の知見を取り入れたIoT、金型の息づかい可視化プロジェクト」などである。
IBUKIでは以前は、特定の人(熟練者)に見積もりを依存していた。その作業は手間がかかる割に受注率は1割以下だったという。それに対して、熟練者のノウハウをAIに投入して(ブレインモデル)、そのノウハウと原価の積み上げをAIに判断させてベストなプライスを導き出すというのが「AIを活用した自動見積もりシステム」である。また、金型製造に関するIoTの活用は、熟練設計者のブレインモデルを作成。熟練者が何を見ているかの視点をもとに、金型に複数のセンサーを内蔵し「型開によるバリ発生」など不具合の未然防止に役立てている。
この2つの発表に対して、RRIの松島氏は「今までのシステムの作り方や運用の仕方と違い、造りながら改善するという取り組み方や、ツールが自社だけでなく他社でも使えるところが共通している」と意見を述べた。これに対して木村氏は「このシステムを使ってカイゼンのスピードが倍になるなど成果が出た。他社にもぜひ使っていただきたい」と提案した。
東芝とIVIが取り組む第4次産業革命と簡単IoT
続いて東芝デジタルソリューションズの福本氏は「第4次産業革命、インダストリアルIoTの時代における導入プロセスと企業間連携」をテーマに、IoTを活用したデジタルトランスフォーメーションのポイントを紹介した。
IoT導入にさまざまな期待を持つ企業が多いものの、現状のプロセスの変革に抵抗がある企業が多い。また、IoT導入において投資コストやテーマの複雑化、専門人材の不足への課題感を持つ企業が多いなどの課題があることを示した。
これに対して「最初はできるだけ単純なテーマに取り組み、効果を早期に得ることが1つのポイントとなる」と福本氏は強調する。また、IoTを現状のプロセス改善ではなく、新ビジネスモデルの創出に活用すること(これが成功すれば自然と現状プロセス比率は下がってくる)や、IoTリソース(共有人材)、仕組み(クラウドなど)、データなどを共有化し、協働化を進める(各社持ち帰りとせず、集まった場所で、みんなで解決する)ことなどもポイントになるという。
「集まっている企業間で共通するものと異なるものを明確化することが重要だ。また、データをしっかり集め共有し、データをどのようにビジネスサービスに生かすかを検討することも必要になる」と福本氏は述べている。さらに、これらの課題を解決するプロジェクトを進めるためには、IT部門だけが行ったり、既存のユーザー部門が単独で対応したりする場合が多いが「それではだめだ」(福本氏)とする。「成功するには企業の複数の部門が連携して取り組む必要がある。企業間の共有化や共同化により、課題を解決するためには、IVIやRRIなど大企業や中小企業が参加している団体が連携して果たすべき役割がますます大きくなっている」と福本氏は述べている。
一方、IVIの西岡氏はIVIの活動により、実現した中堅中小企業向けソリューションなどについて紹介した。IVIは、日本機械学会生産システム部門の「つながる工場」分科会が母体となり、2015年6月から活動を本格化した民間団体である。大企業から中小企業までが参加し、より実践的な課題解決に取り組んでいる。
パネルディスカッションで西岡氏は「IVI−10万円IoTキット」や「IVI地域中小企業ネットワーク」などIVIの活動状況を紹介。「IVI−10万円IoTキット」はエッジコンピュータ(1万円×4台)、センサーモジュール(1万円×1)、ICカードリーダー(5000円×4)、ICカード(200円×50)、電流センサーモジュール(1万円×2)から構成されており、非常に低価格で簡単に実現できることが特徴だ。
ただ「これは売り物ではなく、こういう仕組みでできていることを紹介しているものだ。実際に使うには使用者がそれぞれの機器を集めて自らの手で組み立てるものだ」(西岡氏)という。また、2017年度IVI地域中小企業ネットワークは全国8拠点で実施し118社、152の人が参加したと報告した。同ネットワークではステージ1で問題発見し、ステージ2で問題を記述し、ステージ3で課題を定義し、ステージ4で課題解決まで持っていくというスケジュールを描き、「ものづくりつながる化」を進めているとしている。
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