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チップ面積を約30%削減する、シンプルな超小型原子時計システムを開発組み込み開発ニュース

NICTらの研究グループは、従来のような複雑な周波数逓倍処理を必要としないシンプルな小型原子時計システムを開発した。原子時計のスマートフォンなどへの搭載にもつながる成果だ。

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圧電薄膜共振子を用いた発振器の写真 出典:情報通信研究機構

 情報通信研究機構(NICT)は2018年1月23日、東北大学、東京工業大学と共同で、従来のような複雑な周波数逓倍処理を必要としないシンプルな小型原子時計システムを開発したと発表した。スマートフォンなどの汎用通信端末への原子時計の搭載にもつながる成果だ。

 同研究グループでは、大型で重く、消費電力が大きい原子時計を小型化するため、GHz帯で良好な共振が得られる圧電薄膜の厚み縦振動に着目。水晶発振器やPLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)を用いた周波数逓倍処理を必要としないシンプルなマイクロ波発振器を開発し、原子時計のボード面積と消費電力の大部分を占めるマイクロ波発振器を大幅に小型化・低消費電力化することに成功した。市販の小型原子時計に比べ、チップ面積を約30%、消費電力を約50%抑制できるという。

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小型原子時計の動作概略とマイクロ波発振器の構成(クリックで拡大) 出典:情報通信研究機構

 原子時計は、ルビジウムなどのアルカリ金属元素のエネルギー準位差から共鳴現象を得るが、アルカリ金属は気体状態にある必要がある。そのため窓付きのケースに入れてレーザーによる観察を行う必要があり、従来はこれにガラス管を利用していた。

 今回同研究グループでは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、ウェハープロセスで製造できる小型のルビジウムガスセルを独自に開発。このガスセルを新開発のマイクロ波発振器と組み合わせて同調動作させたところ、1秒間で10-11台の周波数安定度が得られた。

 同成果を実用化すれば、原子時計システムの大幅な小型・低消費電力化が可能になる。これまで人工衛星や通信基地局に搭載されていた原子時計を、汎用通信端末にも搭載できるようになる。これによって通信端末の利便性が向上する他、高い同期精度が求められるセンサーネットワークからの情報取得、屋内ドローンなどGPS電波が安定しない環境でのロボット制御など、新たな市場の創出も期待できる。

 今後は、デジタル制御系の簡略化・省略化を進め、一層の低消費電力化を2019年をめどに実施する。また同時に、高密度実装に適した光学系を備えるガスセルの開発も進めるとしている。

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