「個人で体験すれば、ビジネスでも使いたくなる」――AR/VRにおけるビジネス利用調査より:VRニュース(2/2 ページ)
IDC Japanは国内企業を対象にしたAR/VRにおけるビジネス利用に関する意向調査の結果を発表。「欧米と比較して、日本におけるAR/VRのビジネス利用状況は明らかに低調である」という結果が見えた一方で、普及へのヒントも見えた。
日本企業のユーザー調査から見えたこと
IDCは2017年10月19〜31日に、国内企業にフルタイムで勤務する20〜69歳の男女を対象とし、Webアンケートを実施した。回答数は約1000だった。回答者の属性については、以下(図)だった。
調査結果からは、欧米と比較して、日本におけるAR/VRのビジネス利用状況は明らかに低調であることがうかがえたという。ビジネスの利用率については、米国や欧州で実施した同時期かつ同様の調査で8〜9%という結果が出たことに対し、日本においては2〜3%という結果になった。
「ビジネスで採用している」という回答の中で、多かった業種は、製造業と情報通信関連だったという。流通や小売業は、他業種と比べて極端に少なかったとのことだ。ニュースなどで導入事例がよく聞こえてくる建築・土木系だが、アンケートから見えた導入率はそれほど高くなかった。「業界には小規模な企業や個人事業主が多くを占めるため」とみており、「市場の裾野が広い」と菅原氏は述べる。
以下は、アンケートに寄せられた自由意見の一部だ。
VRについて
- 内容としては面白いが、どのように利用すればよいかは想像がつかない
- どの程度の需要があるか、将来的な需要が見えにくい
- 機器の操作訓練に役立つと考えているが、使用環境を整えるのに資金がかかる
- 中小企業なので設備にかけるお金も限られているし、メリットが分かりにくい
- 今のままで仕事は回っているので急いで採用しなくてよいと思う
- ハウスメーカーなので注文住宅に対して利用ができる気がする
- 今のVR技術は娯楽感覚が強く、福祉の業界で生かす方法が分からない
- そもそもExcelやメールも使いこなせていないので、VR技術なんて説明しても理解できない
ARについて
- 施設の管理に非常に役立つと考えているが、使用環境を整えるのに資金がかかる
- 幅広い分野での利用は大いに取り入れていくように考えることが必要だと思われる
- そもそも内容がよく分からないし、うちの会社には永遠に必要なさそう
- そもそも決裁権のある人たちにAR技術やその利点を理解させるのが無理
- 金額が高そう、役に立つと分からない限りは購入しないと思う
- 下請けなので取引先が導入しなければ導入しない
- 積極的に採用することはぼぼないと思うが、他社が扱いはじめたり、取引先が進めてきた場合は取り入れると思う。職務内容的にはVRよりARの方が取り入れやすそう
- 扱える人間がいないので恐らく採用されないだろう
- 高いわりにあまり活用されていない
菅原氏は、上記の回答傾向をまとめると、大体以下2つの問題に絞られると説明する。
- お金がない
- 使い道が分からない
「この手の理由は、新しいモノを勧められたときに断る理由としてよく使われる。また断る時によく使われるのも『お金が』(という言葉)。AR/VRについては、“わがこと化”が進んでいないために、どうやって使ったらよいか分からない」(菅原氏)。
実際、ビジネス利用の阻害要因についての回答においても、やはり金銭がらみと、使い道が不明といった理由が多かった。
日本市場について、総じて悲観的な回答にはなってしまった今回だが、今後の普及について、ヒントとなるような情報も得られたという。AR/VRを「(ビジネス以外の)個人で体験したことがある」と答えたユーザーと、ビジネスで採用したことがあるというユーザーの比率に相関性が見られたことだ。「AR/VRを個人で体験すると、そのユーザーが企業でインフルエンサーになってくれる可能性がある。体験すれば、採用を考えてくれる傾向」(菅原氏)。個人レベルでの体験を拡大させることで、AR/VRのビジネス利用の機会や可能性を広げられるだろうとしている。
「AR/VRのビジネスはまだ始まったばかり、草創期である。全産業に目を向けると、まだ潜在的な可能性が眠っている分野は多いと思われる。AR/VRをまだ知らない人々に向けてアピールしていくことで、将来の市場を広げていけるだろう」と菅原氏は述べた。
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