新たなAIエッジデバイス連合が登場、日立とファナック、PFNが新会社設立:FAニュース
ファナックと日立製作所、PFNの3社は、エッジデバイスにAI技術を活用したインテリジェントエッジシステムの開発を目指し、2018年4月2日付で合弁会社を設立する。新たなエッジ領域での情報基盤の開発を行う。
ファナックと日立製作所、Preferred Networks(PFN)の3社は2018年1月31日、エッジデバイスにAI技術を活用したインテリジェントエッジシステムの開発を目指し、2018年4月2日に合弁会社を設立すると発表した。
インテリジェントエッジシステムとは、クラウドと工作機械、産業機械、ロボットなどのエッジデバイスとの中間層においてAIを活用し、定時性を持ったリアルタイム制御を実現するシステムである。
新会社では、ファナックの工作機械やロボットに関する技術とノウハウ、日立製作所の製造現場における制御技術をはじめとしたOT(制御技術)およびIT(情報技術)の知見、そしてPFNのディープラーニング技術や分散コンピューティング技術を融合させ、インテリジェントエッジシステムの実現を目指す。合弁会社設立後、事業性検証および事業計画の策定を行い、その後、実際のシステム開発や適用分野の拡大を図る計画としている。
新会社は3社が1000万円ずつ出資して設立。商号は「Intelligent Edge System合同会社」としており、社長は日立製作所 執行役副社長の齊藤裕氏が務める。齊藤氏は2018年3月31日には日立製作所の執行役副社長職を退任し、同年4月1日からはファナックの副社長執行役員に就任する。
インテリジェントエッジシステムとFIELD systemとの関係性
ファナックでは既に2016年4月に工場のIoT基盤として「FIELD system」を、PFNを含む4社で共同開発を行うことを発表。その後、NTTグループなどを加えた他、パートナー企業の参画を募り、2017年10月には運用開始を発表したばかりである(※)。
(※)関連記事:現場志向のIoT基盤「FIELD system」が運用開始、稼働監視などを年間100万円で
ちなみに日立製作所はFIELD systemのトータルインテグレーションパートナーでもあり、2016年8月に開催されたFIELD system初のパートナーイベントでは、日立製作所 取締役 代表執行役社長兼CEOの東原敏昭氏が代表としてあいさつをしたという関係性である(※)。
(※)関連記事:ファナックのスマート工場パートナーに200社以上が参加、デファクト形成へ加速
新たに設立する「Intelligent Edge System合同会社」とFIELD systemの関係性についてファナックの代表取締役会長 兼 CEOである稲葉善治氏は「FIELD systemの開発に今後とも力を入れていく上で、より高速で定時性を持ったリアルタイム制御の実現を目指す。その意味で合弁会社の活動は、プラスの効果をもたらすものと考える。工場自動化の分野に特化してきたが、急速に進もうとしている製造業のIoT化に柔軟かつ迅速に対応し、今後とも製造業の発展に貢献していく。そのための取り組みの1つ」とコメントしている。
一方で日立製作所は「FIELD systemがカバーしていない工場以外の領域で活用できるエッジ領域の基盤構築を進めていく。ITとOTの両面の知見を持った日立製作所の強みを発揮できる」(日立製作所 広報)としている。
今後は、下位のセンサー領域の情報を集約し、上位のITシステムとの連携を実現する共通のAI搭載エッジ基盤の開発を進めていく計画。製品化や投入時期などについては「詳細はまだ決まっていない」(日立製作所 広報)という。
エッジ領域での企業間協力の動きとしては、FIELD systemに加え、2017年11月にはアドバンテック、オムロン、NEC、日本IBM、日本オラクル、三菱電機の6社が幹事となった「Edgecrossコンソーシアム」が設立されたばかり(※)。主導権争いが激しさを増している。
関連記事
- 現場志向のIoT基盤「FIELD system」が運用開始、稼働監視などを年間100万円で
ファナックとシスコシステムズ、ロックウェル オートメーション ジャパン、Preferred Networks、NTTグループ3社は、2016年4月に開発に着手した製造現場向けのIoTプラットフォーム「FIELD system」の国内サービスを開始した。 - ファナックがIoT基盤の壮大な実演、JIMTOFで80社250台の工作機械を見える化
ファナックは「JIMTOF2016」において、同社が展開する工場用IoT基盤「FIELD system」の壮大な実演を行った。同システムによりJIMTOFに出展した機械メーカー80社、250台の工作機械をつなぎ、稼働状況の見える化を実現した。 - IT×OTだけではない、日立のIoTを支える構造改革の経験
IoTによるビジネス変革が進む中、高い総合力を生かし新たなチャンスをつかもうとしているのが日立製作所である。同社のIoTへの取り組みと現状について、日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部長の阿部淳氏に話を聞いた。 - スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
2017年はスマートファクトリー化への取り組みが大きく加速し、実導入レベルでの動きが大きく広がった1年となった。現実的な運用と成果を考えた際にあらためて注目されたのが「エッジリッチ」「エッジヘビー」の重要性である。2018年はAIを含めたエッジ領域の強化がさらに進む見込みだ。 - スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。 - 芽吹くか「組み込みAI」
第3次ブームを迎えたAI(人工知能)。製造業にとっても重要な要素技術になっていくことは確実だ。2017年からは、このAIを製品にいかにして組み込むかが大きな課題になりそうだ。 - 世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.