既存事業が地盤沈下するNEC、再建のカギを握る「安全」と都市・クルマ・工場:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
NECは、現行の3カ年中期経営計画の達成が難しくなったことを受け、目標を再設定した2020年度までの3カ年の中期経営計画を発表した。再建に向けては「収益構造の改革」「成長の実現」「実行力の改革」を3本柱とし、成長の原動力として監視システムなどのセーフティ事業を位置付けた。
セーフティ事業が成長の原動力に
これらの収益改善の取り組みの一方で、NECが成長の原動力と位置付ける最も大きな事業が顔認証システムなどを含むセーフティ事業である。同社の顔認証システムは世界最高クラスの精度が市場から高い評価を受けており、空港や犯罪捜査などで活用されている。これらの「公共安全」の領域や政府系サービスなどの領域でグローバルでセーフティ事業の成長に取り組む方針だ。セーフティ事業の海外売上高は2017年度が500億円となっているが、2020年度にはM&Aも含め、2000億円まで成長させるとしている。
新野氏は「NECが強い、生体認証技術やAI技術などの基盤技術を生かし最も差異化を図れる領域がセーフティ領域だと考えている。公共安全領域からデジタル政府領域、スマートトランスポーテーション領域まで町全体をカバーした安全・安心を実現する『NEC Safer Cities』を訴えていく」と語る。
一方で、国内については「市場の変曲点を捉えた事業成長」を目指す方針。日本政府が推進する「Society5.0」などの動きに対応し、グローバルと同様の「安全・安心」領域に加え、「持続可能なスマートサプライチェーンの形成」と「安全・快適なコネクテッドカーの実現」を重点領域と位置付ける。
スマートサプライチェーンについては、食料需給最適化や渋滞解消、キャッシュレス化、止まらない工場およびプラントの実現などを目指す。コネクテッドカーについては、AI、IoT、ネットワークの技術とリソースをスマートモビリティ領域に投入していく方針である。
これらについても生体認証やAIなどの基盤技術での差異化を推進するとともに、新たにサービス型ビジネスへのシフトを推進。既存の「NEC the WISE IoT Platform」などに加え、サービスの共通プラットフォームなどの整備も行い、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)を推進するとともに、NEC自身のビジネスモデル変革を推進する。
新野氏は「IoTの進展によりICTが適応できる領域が大幅に拡大している。これらの変化に応え、共創プログラムなども通じて、サービス型のビジネスの強化を進めていく」と述べている。
これらの取り組みにより、2017年度が国内売上高2兆1000憶円、海外売上高7300億円に対し、2020年度は国内が2兆1100億円、海外売上高8900億円の実現を目指すとしている。
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