実験動物に依存しない、新たな感作物質試験法を開発:医療技術ニュース
東北大学は、実験動物に依存しない新たな感作物質試験法「IL-8 Luc法」を開発した。同試験法がOECDのテストガイドラインに採択されたことで、国内外の化粧品や医薬品開発において標準的な試験法として用いられることが期待される。
東北大学は2017年12月8日、実験動物に依存しない新たな感作物質試験法「IL-8 Luc法」を開発したこと、また同試験法が経済協力開発機構(OECD)のテストガイドラインに採択されたことを発表した。これは、同大学大学院 医学系研究科 皮膚科学分野 教授の相場節也氏らによる研究成果だ。
今回開発したIL-8 Luc法は、アレルギー反応を誘導する遺伝子にホタルの発光遺伝子を連結し、その発光反応を利用してアレルギー反応を検出する試験法だ。他の研究機関や企業による同試験法の妥当性検証を経て、同年10月9日にOECDテストガイドラインの国際試験法の1つとして認められた。
OECDテストガイドラインに採用されている試験法には、IL-8 Luc法と同様、培養細胞を用いるh-CLAT法やU-SENS法がある。ただし、蛍光染色によってアレルギー反応を検出する点が異なり、技術の習得が必要で判定が複雑だ。IL-8 Luc法はこれらの試験法と比べて、簡便で迅速に検出試験ができる。
IL-8 Luc法がOECDのテストガイドラインに採択されたことにより、国内外の化粧品、医薬品開発において標準的な試験法として用いられることが期待される。
化粧品や医薬品の中の化学物質がアレルギー反応を起こさないかを確認する皮膚感作性物質試験は、これまで動物実験によって評価されていた。EUでは化粧品開発における動物実験を2013年に全面禁止しており、動物に依存しない感作性試験法の開発が化粧品業界の課題となっていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 薬の濃度・効果を生きた動物の脳や内耳からリアルタイムに計測するセンサー
新潟大学は、針状のダイヤモンド電極センサーを用いた薬物モニターシステムを開発し、生きた動物の脳や内耳の狭い空間でのさまざまな薬の濃度と作用をリアルタイム計測することに成功した。 - 無重力で発現が急上昇する骨関連遺伝子を発見、メダカの連続撮影で明らかに
東京工業大学は、国際宇宙ステーション「きぼう」でメダカを8日間連続で撮影し、骨芽細胞マーカーなどの骨関連遺伝子と、その他の5つの遺伝子の発現が無重力下で急上昇することを明らかにした。 - 人間そっくりな眼科手術シミュレーター、網膜硝子体手術が可能な模擬眼球を搭載
名古屋大学は、人間そっくりな眼科手術シミュレーターを開発した。2つの網膜硝子体手術の手技が練習できるほか、眼底網膜部に変形表示機能を搭載しており、手技の評価が可能だ。 - 植物性食品が原料、実践に即した手術トレーニング用模擬臓器を開発
凸版印刷と寿技研は、生体と同様の柔軟性、強度、感触などを持ち、形状や病態などをリアルに再現できる、植物性食品を原料とした手術トレーニング用模擬臓器を開発した。 - 「奇跡の一本松」を保存した生物研究所が乳がん触診シミュレーターを開発した理由
乳がんの早期発見に役立つのが自身での触診だ。だが、自分の胸を触ってシコリを感じても、それががんなのかを判別することは難しい。そのシコリの違いを学べる「乳がん触診シミュレーター」を京都の生物教材メーカーである吉田生物研究所が開発した。「奇跡の一本松」の保存などで知られる同社は、なぜ乳がん触診シミュレーターに取り組んだのか。