組み込み業界に大インパクト「Amazon FreeRTOS」の衝撃:IoT観測所(40)(4/4 ページ)
「AWS re:invent 2017」で発表された「Amazon FreeRTOS」は組み込み業界に大きなインパクトを与えることになりそうだ。ベースとなるオープンソースのMCU向けRTOS「FreeRTOS」、FreeRTOSとAmazon FreeRTOSの違いについて解説する。
MCU向け商用RTOSにとって脅威に
Amazon FreeRTOSが衝撃的なのは、商用に使える無償のFreeRTOSが、コネクティビティーやセキュリティのオプション付きで提供されることだ。Armの「Mbed OS」もそうじゃないかと言われればその通りだが、大きな違いはArmアーキテクチャ以外もサポートしていることだ。
実際に、当初のラインアップにはMIPSベースの「PIC32MZ EF」が含まれていることからもこのことが分かる。Mbed OSもそうだが、コネクティビティーオプションは、AWS IoTにしかつながらないわけではなく、多少なりとも作業は発生するにしても、もっと一般的に利用できるものになると思われる。こうなると、Mbed OSのメリットに当たるものはかなり薄れることになる。
厳密に言えば、Mbed OSは結果としてセキュリティ周りがかなり重厚な構成になった、RTOSとしてはややヘビーなものであり、逆にAmazon FreeRTOSはこのあたりが相対的にやや軽めな感はある。このため、必ずしも競合しないという見方もある。
しかし、そもそもMCU向けRTOSの市場は今のところ比較的小さめで、ただIoTの普及にはRTOSが必要だよね、という共通認識ができてきてこれからパイが広がっていこうという矢先の話だから、Mbed OSだけでなく、ExpressLogicの「ThreadX」とかMicriumの「μC/OS-II」などのMCU向け商用RTOSにとっても間違いなく脅威であろう。
ちなみにAmazon FreeRTOSだけでなく、同時に発表されたAmazon greengrassもなかなかにインパクトがあるというか、考え方によってはもっと大きなインパクトがありそうだが、こちらは稿をあらためてご紹介したい。
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