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組み込み業界に大インパクト「Amazon FreeRTOS」の衝撃IoT観測所(40)(3/4 ページ)

「AWS re:invent 2017」で発表された「Amazon FreeRTOS」は組み込み業界に大きなインパクトを与えることになりそうだ。ベースとなるオープンソースのMCU向けRTOS「FreeRTOS」、FreeRTOSとAmazon FreeRTOSの違いについて解説する。

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アマゾンはボトルネックをどうやって解消したのか

 ということで本題に移る。AWS re:invent 2017で発表されたAmazon FreeRTOSは、AWSがFreeRTOSの資産一式をReal Time Engineersから丸ごと買収し、しかもMITライセンスで無償公開するというものだ。

 MITライセンスの場合、「著作権及びMITライセンスの全文を表示」さえすれば改変・再配布・商用利用・有償提供など何でも可能になっている。つまり製品のパッケージに、License.txtというファイルを追加してここに著作権表示とライセンスだけ掲載すればOKになったわけだ。

 ちなみにFreeRTOSの資産一式の中にはReal Time Engineersそのものも含まれており、同社の創業者であり、FreeRTOSの作者であるリチャード・バリー(Richard Barry)氏は現在AWSチームの一員として、引き続きFreeRTOSに関わっているそうだ。これでFreeRTOSを商用利用するためのボトルネックが解消されたことになる。

 では、AWSというかアマゾンにとって、ここまでやるメリットは何なのか。2015年にAWS IoTが発表されたとき、既に多くのIoTスターターキットが用意されているという話は紹介した通りである。

 現在は、多少スターターキットの品種も増えている(https://aws.amazon.com/jp/iot-core/getting-started/)。ただし、これらのスターターキットをみると、環境そのものがまちまちである。

 例えば「Seeeduino Cloud and Grove」(http://wiki.seeed.cc/Grove_IoT_Starter_Kits_Powered_by_AWS/)の場合、Arduinoのシールドなので、動作環境はArduinoのランタイム上ということになる。

 一方TI(Texas Instruments)の「LaunchPad」(http://www.ti.com/ww/en/internet_of_things/IoT-Amazon-Web-Services-for-SimpleLink-Wi-Fi.html?DCMP=aws-amazon&HQS=awsiot)の場合は、TIが提供する「TI-RTOS」上で動くという具合だ。

 非常に簡単なデバイスならOSなしでもいけるかもしれないが、多少なりとも複雑なことをさせようとすると、RTOSがあった方が便利である。特に今後の展開を考えると、ネットワークスタックを搭載している方が何かと都合が良く、そうなるとRTOSなしで移植するのは(対応機種が増えると)手間が掛かりすぎる。

 ただし、アマゾンはこれまでOSは提供してこなかったし、いちからフルスクラッチでOSを作るのもコストと時間がかかりすぎる。実績があり、それなりに広く使われ、多機種に対応するRTOSがあれば、それにAWSへのコネクティビティーを組み込むほうがはるかに容易だ。そう考えると、FreeRTOSの買収は、極めて理にかなった戦略といえる。

 もちろん、単にFreeRTOSを提供するだけでなく、AWSへのコネクティビティーやセキュリティ機能も同時に提供される。例えば、Embedded Artistsが提供する「LPC54018 IoT Module」(https://www.embeddedartists.com/products/iot/iot_lpc54018.php)の場合、「Amazon FreeRTOS Console」(https://console.aws.amazon.com/freertos)から、コネクティビティーのライブラリが入った形でFreeRTOSを入手できる。現状はまだ対応するボードが少ないのと、FreeRTOSそのものはソースで提供されてもコネクティビティーに関しては必ずしもその限りではないようで、こうした形での提供になるようだ。

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