協働ロボットの細やかな作業をノンプログラミングで実現するセンサー:協働ロボット
ハンガリーのオプトフォースが手掛ける産業用ロボット向けの力覚/トルクセンサーは、赤外光を用いた独自のセンサー技術を基に人間の手作業と同等レベルで正確かつ細やかな動作を可能にするだけでなく、センサーを制御するためのソフトウェアをロボットコントローラー向けに提供していることも特徴になっている。
ハンガリーの産業用ロボット関連企業であるオプトフォース(OptoForce)が順調に業績を伸ばしている。同社が扱っているのは、産業用ロボットそのものではなく、グリッパーなどのロボットハンドとロボットアームとの間に組み込む力覚/トルクセンサーだ。赤外光を用いた独自のセンサー技術を基に、人間の手作業と同等レベルで正確かつ細やかな動作を可能にするだけでなく、センサーを制御するためのソフトウェアをロボットコントローラー向けに提供していることも特徴になっている。現在対応しているのは、ユニバーサルロボット(Universal Robots)とクーカ(KUKA)の2社だが、今後はABBと安川電機にも対応する予定。さらに「産業用ロボットで有力な日本のメーカーとの提携を広げたい」(オプトフォース CEOのエイコス・ドモトール(Akos Domotor)氏)としている。
2012年にハンガリー大学のロボット技術をベースに創業したオプトフォースは、2016年から産業オートメーションに事業を特化。この戦略が当たり、売上高は2016年度の50万ユーロ(約6700万円)から2017年度は130万ユーロ(約1億7500万円)に伸びる見込み。今後も、年平均3倍前後の成長を予想している。日本市場では日本バイナリー、アルゴ、カンタムエレクトロニクスが販売パートナーになっている。
ドモトール氏は「従来の産業用ロボットは、人間とは別の場所で、1つのタスクをずっと行うのが一般的だった。しかし、人とともに働く協働ロボットに対する要件は異なる。さまざまなタスクをインテリジェントかつ自動的に行うことが求められるようになっている。当社のセンサーはその実現に貢献できる」と語る。
オプトフォースのセンサーは、赤外光の光源を覆うシリコンの微細な形状変化を反射光から検知する技術をベースに、6軸の力覚/トルクを検知できる。高精度モデルの「HEX-E」で、定格荷重(全方向)が200Nm、定格トルクがTzで6.5Nm。Txyで10Nm、分解能がFxyで0.2Nm、Fzで0.8Nm、定格変形量がFxyで±1.7mm、Fzで±0.3mm。外形寸法は直径70mm×高さ35mm、重量も260gと小型軽量で、衝撃にも強い。
ハードウェアの高い機能性に加えて、ロボットコントローラー上でセンサーを制御するためのソフトウェアもパッケージにしていることも大きな特徴だ。「ユーザーの使いやすさを考えて、GUIベースのソフトウェアもセットにすることにした。センサーデータを基に一からロボットプログラミングを行うのは大変だ。これからの産業用ロボットがさまざまなタスクを行うことが求められている以上、その手間を省くべきだろう」(ドモトール氏)。
オプトフォースが採用されているのは、人が行うような細やかな作業プロセスだ。電子基板へのメモリモジュールの挿入、エンジンヘッドへのピン挿入、艶出し、研磨といった表面仕上げ、ピック&プレースなどだ。これらの複雑な作業を、プログラミングすることなく短時間でセットアップできる。
ドモトール氏は「高齢化や人手不足が課題になっている日本の工場では、協働ロボットと高精度センサーの組み合わせによるインテリジェントな自動化への需要は多いだろう。ぜひ採用を検討してほしい」と述べている。
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