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強い抗がん作用を持つ活性化抑制因子を同定、酸化ストレスを介した細胞死促進:医療技術ニュース
東北大学は、酸化ストレスを介した細胞死を促進する新規がん抑制分子を発見した。細胞死を誘導するキナーゼ分子の新たな活性化促進因子として「TRIM48」を同定し、これを高発現したがんは細胞死が起きやすく、増殖が抑制されることが分かった。
東北大学は2017年12月6日、酸化ストレスを介した細胞死を促進する新規がん抑制分子を発見したと発表した。同大学大学院薬学研究科 教授の松沢厚氏らが、産業技術総合研究所、東京大学との共同研究で明らかにした。がんの発症・進展を抑制する創薬標的分子としての可能性を示す。
人体を構成する細胞は、活性酸素(酸化ストレス)や病原体感染などのストレスを感知し、細胞死、免疫応答といった適切な応答を誘導することで健康を維持する。がんなどの疾患発症の原因の1つとして、これらの応答の異常が指摘されている。
同研究では、酸化ストレスを感知・活性化し、細胞死を誘導するキナーゼ分子「ASK1」の新たな活性化促進因子として、ユビキチン化酵素「TRIM48」を同定。このTRIM48が、酸化ストレス時のASK1の活性化を促進することが分かった。一方、TRIM48の発現を抑えた細胞では、酸化ストレスによるASK1の活性化や細胞死の誘導が抑制された。
さらに、マウスを用いて、がん細胞の皮下移植実験を実施。TRIM48を高発現したがん細胞を移植した腫瘍(がん)では、細胞死が起きやすく、増殖が抑制されることが分かった。この成果から、TRIM48が強い抗がん作用を持つがん抑制タンパク質であることを見出した。
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