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進捗いまいちな廉価産業用VRシステム、日本は“それ以前”の問題か産業用VRカレイドスコープ(4)(3/3 ページ)

本連載では産業全体のVRの動向や将来展望について深堀りして解説していきます。今回は、産業用VRを取り巻く環境についての現状の最新動向について説明します。

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日本には、産業用VR以前の問題が

 なぜ産業VR製品が出てこない、ユーザー事例も出てこないとやきもきさせられる、日本の産業用VRの状況ですが、勢いのある海外と比べると、日本はそもそも3D CADの普及が遅れているという状況があります。

 海外は、現在の廉価なVR HMDが出てくる以前から、4面スクリーンなどの従来型VRの活用が進んでいた背景があり、そこにパルマー・ラッキー氏が起こしたVRシンギュラリティともいえるOculus Riftブームで爆発的に火がついたという側面があります。

 一方日本では、自動車や家電業界などを中心とした限定的な範囲でしか3D CADの普及が進まず、若者が工業高校や専門学校で3D CADを学んで、勇んで地元製造業に就職したら、そこでは3D CADなど使われておらず失意に暮れているという話がまだ今年の話として聞こえてくる始末です。ここ最近の「設計・製造ソリューション展」でも、3D CADデータを見られるVRシステムに対して、「でもこれ3D CADで設計しないといけないんだよね。うちは2D CADなんだけど」とぶぜんとした表情で言い放つ来場者がいた、なんていう話があるくらいです。

 逆に、これまで3D設計の必要を感じていなかった従来型製造業の企業が、産業用VRがきっかけになって、「3Dで設計すれば、作る前に実物大で見て確認できる」と3D CAD導入に踏み切るという、世界とは逆の動きが日本では見られるのかもしれません。


「第25回 3D&バーチャルリアリティ展(IVR2017)」のプロノハーツブース

3D CADデータだけでは限界、CADデータ以外の産業用3DデータでのVRの活用が必要

 先に説明したように、日本では3D CADの普及がまだまだで、産業界に十分な量の3D CADデータがありません。既存のデータ数から考えても、海外に比べると活用の伸びは自ずと限界があるのです。

 一方で、検査結果として納入されるレーザーレンジファインダーによる広域3Dデータは着々と蓄積されており、それを見る手段がないという声が、点群ソリューションの展示会である「SPAR」などで聞かれるようになっています。ドローン搭載の3Dレーザースキャナーの普及とともに、この蓄積速度は従来の十倍以上になると見込まれています。

 「裏面のポリゴンを描画しない」などの処理節約術が使えるポリゴンと違い、点群の表示処理はポリゴンの10倍以上大変です。しかし、CADデータに比べて取得が簡単で、各種の製造工程の検査結果として大量に取得され、結果報告書類としては、そのうちわずかの値しか使われない状況。しかし測定された点群データは実物に関する大量の情報を含んでいます。

 これをまずは、見て・活用できるようになれば、事前に決められている箇所に関する定点測定には現れない、製造改善、新製品開発に重要な知見が得られる可能性が高いのです。

 点群が活用されないのは、CADデータ以上に、面が貼られていない点の集まりを平面ディスプレイ上で回転させながら眺めたところで、よほど特別な訓練を積んだ専門職の人以外は何も分からないからです。しかし、これを立体視で、実物大で見ることができるとなれば、話は違ってくるでしょう。


 次回こそ、産業用VRシステムのユーザー活用事例について紹介する予定です。

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VR | CAD | Windows 7 | VRゴーグル


Profile

早稲田 治慶(わせだ はるみち)

長野県岡谷市在住の3D設計者。日本で恐らく唯一の製造業VRエヴァンジェリスト。ローランド ディー.ジー.株式会社にて3D CADでの小型CNC切削加工機設計、CAM開発プログラミング、加工機の補正システム開発などの勤務経験を経て、2012年に株式会社プロノハーツに入社。ニコニコ超会議に出展した「ミクミク握手」、産業用3Dプリンタ、「いいね玉」の開発などの後、製造業VRシステムpronoDRのプロトタイプを開発。その後も製造業VRの新技術開発に従事し、CAM講習講師、鳥取県CMXプロジェクトでハイブリッド金属 3D プリンタLUMEXの運用を担った経歴も持つ。さまざまな方式の3Dスキャン技術にも通じ、吉本興業所属タレントのYouTubeチャンネル企画にも3Dスキャンで協力している



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