「H-IIA」採用のRTOSに後継版、時間パーティショニング機能など機能安全に対応:組み込み開発ニュース
TOPPERSプロジェクトは、時間パーティショニング機能など、機能安全からの要求に対応できる機能を備えたリアルタイムOSとして「TOPPERS/HRP3カーネル」を2018年1月をめどに一般公開する。
TOPPERSプロジェクトは2017年11月15日、リアルタイムOS(RTOS)「TOPPERS/HRP3カーネル」を2018年1月をめどに一般公開すると発表した。宇宙航空研究開発機構がH-IIA/Bロケットなどに採用している「TOPPERS/HRPカーネル」後継版。時間パーティショニング機能など、機能安全からの要求に対応できるパーティショニング機能を備えた。
TOPPERSプロジェクトでは、IoT(モノのインターネット)時代のRTOS技術構築に向け、TOPPERS第3世代カーネル(ITRON系)の開発を進めている。第3世代カーネルでは、機能安全からの要求に対応できるパーティショニング、ティックレスの高分解能時間管理と外部時刻同期といった新しい要求に対応するための機能を追加。一方で、高信頼システムに不向きと思われる機能を廃止した。
今回のHRP3カーネルは、第3世代カーネルに属するRTOSの1つ。第3世代カーネルの出発点であるASP3カーネルをベースに、メモリ保護機能、オブジェクトアクセス保護機能、時間パーティショニング機能、拡張サービスコール機能を追加した。
これら追加機能のうち、新規性が高いのが時間パーティショニング機能だ。ITRON系のRTOSにメモリ保護と同機能の両方を導入したのは、HRP3カーネルが初となる。同機能は、AUTOSAR仕様OSに導入したものと同じ基本コンセプトを採用しながら、ITRON仕様への適合化やシステム動作モードの導入など拡張化を図った。また、拡張サービスコールの作成では、TECS(TOPPERS組込みコンポーネントシステム)を用いてコードの自動生成を可能にした。
TOPPERSプロジェクトでは、引き続きTOPPERSカーネル開発ロードマップに従って各種のRTOSの開発を進める予定だ。ASP3カーネルをマルチおよびメニーコアプロセッサ向けに拡張したTOPPERS/FMP3カーネルの開発に着手しており、今後、ASP3カーネルをベースに機能を絞り込んだTOPPERS/SSP3カーネルの開発にも取り組む。また、ASP3カーネルとHRP3カーネルの各種プロセッサへのポーティングも行うとしている。
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