日本仕様のAUTOSAR準拠SPFを先行販売、2019年に市販モデルで採用:ET2017(1/2 ページ)
車載ソフトウェアの業界標準として定着が進みつつあるAUTOSARに対し、開発の効率化を実現するとともに日本品質を盛り込む活動を続けるAPTJが、AUTOSAR準拠のソフトウェアプラットフォームを開発し、先行販売を開始する。
車載ソフトウェアの業界標準として定着が進みつつある「AUTOSAR(Automotive Open System Architecture)」に対し、日本品質を盛り込む活動を続けるAPTJは2017年11月15日、AUTOSAR準拠のソフトウェアプラットフォーム(SPF)を開発し、先行販売を開始すると発表した。2017年11月15〜17日にパシフィコ横浜(横浜市)で開催されている組み込み関連技術の展示会「Embedded Technology 2017(ET2017)」とIoT(モノのインターネット)関連技術の展示会「IoT Technology 2017」において、同技術のアピールを行った。
AUTOSARのもたらす価値
車載ソフトウェアにおいて、ソフトウェアの複雑性を軽減し再利用性などを確保するために、自動車、自動車部品、エレクトロニクス、半導体、ソフトウェア企業などが協力して開発を進め、ソフトウェア基盤の業界標準として普及を進めているのがAUTOSARである。ただ、AUTOSARに関連するソフトウェアの開発効率を向上させツールや人材などを充実させるためにはソフトウェアプラットフォーム(広い意味でのOS、以下SPF)が必要となる。
AUTOSARには、コアパートナーとしてトヨタ自動車が参加するなど、日本の企業も数多く参画しているが、中心となって推進しているのはドイツを中心とした欧州の自動車業界である。そのため欧州系の自動車メーカーやサプライヤーは積極的にAUTOSARを活用しており、AUTOSAR準拠のSPFについても欧州系のベンダーが先行している状況である。
これらの動きに対し、AUTOSAR仕様準拠のSPF開発に乗り出したのがAPTJである。APTJは2015年に設立された名古屋大学発のベンチャー企業である。AUTOSAR仕様準拠のSPFの開発と、AUTOSARに対する仕様の提案などを目的としている。
設立の意図について名古屋大学 教授 附属組込みシステム研究センター長で、APTJ代表取締役会長兼CTOの高田広章氏は「AUTOSARが国際標準になる流れの中で車載制御システム向けのSPFが海外製だけになる恐れがあった」と危機感について述べる。
コンソーシアム型のベンチャー企業
APTJは「コンソーシアム型の研究開発ベンチャー」(高田氏)としており、パートナーソフトウェア企業と、共同開発サプライヤーなど、パートナーを募る形で研究開発を進めていることが特徴だ。
パートナーソフトウェア企業からは出資と技術開発陣の派遣を求める代わりに新たに開発したSPFのライセンス提供をパートナーソフトウェア企業経由で行うという枠組みとなっている。一方で、共同開発サプライヤーからは開発費の一部を負担してもらう代わりに、SPFに対する要求を出しさらに成果物に対するライセンスを得ることができるという。
共同開発サプライヤーとしては、ティア1サプライヤーである豊田自動織機、ジェイテクト、東海理化電機製作所が入っている他、自動車メーカーとしてはスズキが参加している。一方のパートナーソフトウェア企業としては、富士ソフト、サニー技研、永和システムマネジメント、菱電商事、東海ソフト、キヤノンソフトウェア(現キヤノンITソリューションズ)、ヴィッツが参加している。
高田氏は「APTJにとっては要件の把握や販売活動、技術サポートなどをパートナーソフトウェア企業に担ってもらうことで、開発に集中できる環境が整っている。さらにSPF完成後の販売先も見えているという利点がある」と強みについて語っている。
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