トヨタ自動車、第3世代ヒューマノイドロボットを開発:ロボット開発ニュース
トヨタ自動車は、トルクサーボモジュールとマスター操縦システムにより、離れた場所の操縦者の動作と連動し、しなやかに全身が動くヒューマノイドロボットを開発した。
トヨタ自動車(以下トヨタ)は2017年11月21日、第3世代のヒューマノイドロボット「T-HR3」を発表した。トルク(力)を制御するトルクサーボモジュールと、全身を自在に操るマスター操縦システムなどにより、操縦者はT-HR3にかかる外からの力を感じながら、操縦者と同じ動きを「T-HR3」にさせることができる。
トヨタは第1、第2世代の楽器を演奏するヒューマノイドロボットにおいて指の動きなどプログラミングに基づく位置制御の正確さを追求してきた。今回の「T-HR3」は、家庭や医療機関などさまざまな場面で人に寄り添い、生活を安全にサポートするパートナーロボットを目指し、やさしく、しなやかな動きを実現した点が特徴だ。災害地、建設作業、宇宙などで活躍するロボットへの応用も視野に入れているという。
コア技術であるトルクサーボモジュールは、トルクセンサー、モーターや減速機などで構成する。トヨタが多摩川精機および日本電産コパル電子と共同で開発した。「T-HR3」の関節29か所とマスター操縦システムの16か所に配置されている。
同モジュールは、内蔵された高感度トルクセンサーによりトルクを感知し、意図したトルクを出力できるようモーターを制御する。これによりロボットの関節を柔軟に制御し、しなやかな動きを実現。またロボットが外から受ける力を操縦者に伝えることができる。周囲の人や物などに接触してもバランスを維持する全身協調バランス制御が可能な他、機器同士や操縦者との接触を回避し、操縦者が安全に操作できる自己干渉回避機能も併せ持つ。
マスター操縦システムは、トルクサーボモジュール、マスターアーム、マスターフットとヘッドマウントディスプレイで構成される。同システムによりロボットの全身を直感的に操ることを可能にした。操縦者はロボットに搭載されたステレオカメラに映し出される立体映像を、ヘッドマウントディスプレイを通じてリアルタイムで確認しながらマスターアームやマスターフットを通じて、あたかも操縦者の分身であるかのような感覚で、離れた場所からT-HR3を操縦できるという。
T-HR3は身長1m54cm、重量75 kg、可動部は32軸+10指。マスター操縦システムの大きさは全幅85cm、全長1m50cm、全高1m45cm、重量170kg、可動部は16軸。データグローブとヘッドマウントディスプレイを付属する。
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