中小企業の技術を集めて取り組む「コックピット内蔵型巨大ヒューマノイドロボットの開発」:ETWest2013 基調講演(1/3 ページ)
2012年夏、大阪で「はじめロボット43号」が発表された。完成すれば4mになる搭乗型巨大ロボットは、発表時点では下半身とコックピットのみで、上半身と外装は2013年になるという話だった。ETWest2013の基調講演で、開発者の坂本元氏がはじめロボット43号機の開発と今後の展望について語った。
2012年に発表した搭乗型巨大ヒューマノイドロボット「はじめロボット43号」は、国内外メディアからの注目も高く取材が殺到したという。今年は、坂本元氏に講演依頼も多いそうだ。
「ガンダムは夢である!」と宣言し、世界初の搭乗型巨大ヒューマノイドロボットを自ら作っている男性と聞くと、どんなタイプの人を想像するだろうか? アニメや映画に出てくるようなちょっとマッドが入っている研究者? 大きな夢を大きな声で力強く語り周囲をぐいぐい引っ張っていくような強気のプロジェクトリーダー?
坂本氏は、そのどちらでもない。穏やかで優しい表情と、静かで訥々(とつとつ)とした語り口。「大人しそうな人だなぁ」というのが、第一印象だ。アニメの中で戦う巨大ロボットと、坂本氏のイメージはすぐには結びつかない。
本稿では、坂本氏が4mロボット製作に至った経緯と、使われている技術、そして今後の展望について、基調講演の内容をリポートする。
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ガンダムを作りたくてはじめ研究所を設立
坂本氏は、高校時代にTVアニメ“機動戦士ガンダム”を見て「将来は、ロボットを作る仕事に就きたい」と思ったそうだ。ところが意外なことに、実際に2002年に二足歩行ロボットを作るまでは、ロボットを作った経験がなかったという。
ロボットを作り始めたのは、2002年に日本科学未来館で開催された第1回ROBO-ONE大会がきっかけだったという。「21世紀になって、二足歩行ロボットを個人で作れる時代になったことが嬉しかったですね。“ガンダムを作りたい”という夢を思い出しました」(坂本氏)。
早速、インターネットで情報収集し、自分で二足歩行ロボットを作り大会に出場した。このときに「これを仕事にしよう」と思い有限会社はじめ研究所を設立。製作するロボットには初代から連番が振られており、現在ははじめロボット47号を開発中だそうだ。
「ガンダムを作りたくてはじめ研究所を設立しました」(坂本氏)とはいうものの、会社設立当初はアパートの一室、畳の上で板金加工から全て手加工でロボットを組み上げていたという。このころに製作していたものは、身長40cm前後の二足歩行ロボットだった。
2005年、自分一人で開発をする限界を感じ始めたころに、数年前にセミナーで名刺交換をした三木繁親さん(三木製作所)の紹介で、大阪市西淀川区の町工場の人たちとの交流を得た。「それまで町工場の人とは接点がなく、ちょうどいい話が来たなぁ〜と感じて一緒にロボット開発を始めました」。
坂本さんは事務所を三木製作所の3階に移し、大阪市西淀川区の町工場集団であるNKK(西淀川経営改善研究会)のメンバーと4mロボットプロジェクトをスタートした。ちなみにこのプロジェクトには、どこからもお金が入ってきていない。開発費は、坂本さんとNKKの持ち出しだ。
受注生産しているロボットに関しては、はじめ研究所からNKKのメンバーに発注し開発をしている。主な取引先は、ロボット研究を行う大学の研究室。国内だけでなく海外からも引き合いがあり、ロボカップヒューマノイドリーグでは、はじめロボットをプラットフォームにしているチーム同士が準決勝や決勝で対戦することが珍しくないという。
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