軟骨伝導補聴器を開発、イヤフォンタイプの補聴器が使えない難聴者へ:医療機器ニュース
リオンは奈良県立医科大学との共同研究により、外耳道閉鎖症、多量の耳漏などによって通常の補聴器が使えない難聴者を対象とした軟骨伝導補聴器を開発した。
リオンは2017年11月13日、奈良県立医科大学と共同で、外耳道閉鎖症、多量の耳漏などによって通常の補聴器が使えない難聴者を対象とした軟骨伝導補聴器を発売した。購入を希望する場合は、同社営業部に問い合わせると全国9カ所の指定医療機関を紹介され、受診した後に購入できる。
軟骨伝導補聴器では、通常の補聴器のイヤフォンの代わりに振動子を外耳道入口の軟骨部に軽く接触させ、増幅した音を振動によって軟骨部に伝えて聞き取れるようにする。一般的な耳かけ型補聴器と同様の形状となっており、圧迫感が少なく、装用するための手術も必要ない。
同社はこれを実現するために、小型、高出力、低消費電力の振動子を新たに開発。補聴器に使用するボタン型電池1個で駆動し、通常の補聴器と同様に使用できる。安定して使えるよう、装用者の耳の形状に合わせて3タイプの振動子ユニットを用意した。
同社は2010年から奈良県立医科大学と共同研究を開始し、2013年より臨床研究を同大学で行った。先天性または後天性の外耳道閉鎖症や外耳道狭窄(きょうさく)などの疾患を持つ被験者に軟骨伝導補聴器を使用してもらい、補聴効果の確認と日常使用の評価を行った。補聴効果は、装用時の聞こえの測定、語音明瞭度測定、環境騒音評価で確認し、日常使用の評価についてはアンケートを実施した。全ての被験者で補聴の効果が確認され、40人は軟骨伝導補聴器を使い続けることを希望し、現在も装用している。
外耳道閉鎖症などの疾患の場合、一般的な補聴器(気導補聴器)では補聴効果が低いため、ヘッドバンド式の骨導補聴器や埋め込み型骨導補聴器を使用している。しかし、骨導補聴器はヘッドバンドなどにより頭部への圧着を必要とし、埋め込み型骨導補聴器は頭蓋骨にインプラントを埋め込む手術が必要だという課題があった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- なぜ日本で補聴器が普及しない? シバントスが市場拡大へ
日本は難聴者が多いにもかかわらず、補聴器を使っていない人が非常に多い。シーメンス・シグニア補聴器を提供するシバントスが、補聴器利用促進と国内市場拡大に向けた取り組みを語った。 - 補聴器は“指向性”から“全方位”へ、ハイレゾ音質とIoT化も実現
オーティコン補聴器は、補聴器の新製品「オーティコン オープン」を発表した。最大の特徴は、従来の聞きたい方向の音だけを聞こえるようにする“指向性”を重視した補聴器と異なり、周囲360度“全方位”から聞こえる音の情景を自然に耳に届けるというコンセプトで開発されていることだ。 - 聴覚だけを頼りに音源の位置や動きを判断する時、大脳は2つの情報を個別処理する
京都大学は、大脳皮質において、互いに矛盾する2つの聴覚情報は統合して処理するのではなく、別々の状態のまま扱われていることを確認した。 - 自然な動作で耳穴生体認証、NECが開発
NECが耳の反響特性を利用した生体認証技術を開発した。音楽を聞くような動作での認証が可能で、作業や移動中の認証も行える。 - 人工軟骨材料の実用化に向け、産学共同研究を開始
北海道大学と日本特殊陶業は、北海道大学産学・地域協働推進機構に「高靱性ゲルの軟骨応用部門」を共同で開設した。ダブルネットワークゲルを人工軟骨材料として実用化する共同研究を進め、治療が困難な軟骨疾患の治療に役立てる。