ニュース
鉄鋼プラントの冷間圧延機をリアルタイムで自動制御する技術:FAニュース
日立製作所は、AIを活用して、鉄鋼プラントで鋼板を製造する冷間圧延機をリアルタイムで自動制御する技術を開発した。熟練工が持つ冷間圧延機の操作ノウハウをデジタル化し、制御を自動化することでオペレーターの操作負担を軽減する。
日立製作所は2017年10月31日、AI(人工知能)のディープラーニングを活用して、鉄鋼プラントで鋼板を製造する冷間圧延機をリアルタイムで制御する技術を開発したと発表した。蓄積した膨大な鋼板の形状パターンや操業の実績データを機械に学習させ、リアルタイムで冷間圧延機を自動制御し、鋼板の波打ちなどの形状を補正する。
熟練工が持つ冷間圧延機の操作ノウハウをデジタル化することで、オペレーターが手動で操作していた制御を機械に学習させることができ、オペレーターの操作負担を軽減する。また、鋼板の形状パターンと機械制御のさまざまな関係性を機械が学習し、新たな制御方法を自動で習得することも可能だ。
同技術には、同社が培ってきた独自の制御技術、ノウハウも生かされている。制御結果をフィードバックしてディープラーニングの学習効率や精度を高めていく仕組みや、ディープラーニングによって異常値の出力を抑制する仕組みにより、同技術を運用しながら制御性能を向上させ、プラントへの悪影響を防止できる。
技術開発にあたっては、同年8月より北京首鋼の遷安製鉄所で実機に同技術を適用する実証実験を実施。その有効性を確認した。日立製作所では、2018年3月から同技術を活用した製品を鉄鋼プラント向けに提供していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IT×OTだけではない、日立のIoTを支える構造改革の経験
IoTによるビジネス変革が進む中、高い総合力を生かし新たなチャンスをつかもうとしているのが日立製作所である。同社のIoTへの取り組みと現状について、日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部長の阿部淳氏に話を聞いた。 - IoTで熟練技術者の技を盗め、生産技能伝承でダイキン工業と日立が協業
ダイキン工業と日立製作所は、IoTを活用し熟練技術者の技能伝承を支援する次世代生産モデルの確立に向け協業する。まずは空調機器の戦略技能の1つであるろう付け工程のデジタル化を実現し、今後さらに対象技能を広げていく方針である。 - スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。 - 世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。 - 人工知能は製造現場でどう役に立つのか
人間の知的活動を代替するといわれる人工知能が大きな注目を集めている。ただ、製造現場で「使える」人工知能は、一般的に言われているような大規模演算が必要なものではない。「使える人工知能」に向けていち早く実現へと踏み出しているファナックとPFNの取り組みを紹介する。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。 - インダストリー4.0の地味化はいい傾向?悪い傾向?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第13回となる今回は、2017年4月に開催されたドイツの「ハノーバーメッセ 2017」で見えた傾向についてまとめます。