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生産現場一筋のトヨタ副社長が学生に教える、「自働化」の在り方大学キャンパス出張授業(2/2 ページ)

自動車業界の経営トップが大学生にクルマ・バイクの魅力や楽しさ、日本のものづくりの重要性を伝える「大学キャンパス出張授業」。東京大学で登壇したトヨタ自動車 副社長の河合満氏の講演を紹介する。

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自働化は手作業から始まる

 自働化を進める上で生産現場で大切にするのは手作業だ。「私が常々言ってきたのは、人がこだわって手作業で作り込むということだ。誰がやっても同じものが作れるというようにしておき、それから自働化するのは簡単だ。品質は工程で造りこむ。複雑な設備や高い設備、故障が直せないなど人がやれないものを自働化するのは間違っている。安全な仕事が確実にできるまで手作業で作り込み、簡単で安い設備、不良が出にくいなど徹底的にシンプル、スリム、フレキシブルを追求した自働化が、あるべき姿だと考えている」(河合氏)と強調した。

 さらに河合氏は、手作業によるラインこそが技能の原点であり、モノづくりの原理原則を知ることができると説明。「腕のいい匠(たくみ)の人の作業を数値化、標準化して自働化する。さらに腕の良い人の作業を数値化するなどを繰り返して今の自働化がある。決して機械、ロボットが一番良いやり方を考えたわけでない」と述べた。

 自働化はこうした匠による技能の改善の積み上げにより成り立つもので、「よりよいラインを作るために、現状の自働化ラインがやっている作業よりも高いレベルの腕を持った技術者を育てることを一番大事にしている」(河合氏)とした。このように新技術や新工法に挑戦し続けることが、技能と技術のスパイラルアップやモノづくりの競争力向上、人材育成につながると結論付けている。

良き人間関係が人材を育てる

 人材育成では「一人一人に関心を持ち信頼関係を築くなどの良き人間関係が重要だ」(河合氏)。上司が部下に対して厳しい言葉を発する裏側には「愛情」を持つことも大切だという。

 こうした信頼関係を構築していくには上司が仕事を教えるとともに、困っていたら適切なアドバイスを行う他、リーダーとして共通の課題を一緒になって解決していくことなどがその道筋の1つとなる。「常に部下の仕事、私生活に関心を持ってやることだ。こうした小さな積み重ねが信頼を築いていくことにつながると思っている」(河合氏)。

 人を動かすには気配りも必要だ。「それには鈍感であっては駄目で、敏感に部下の動向を察知していくことが求められる。その人の能力や性格をしっかり把握し、少し高いところに目標を置いてやり、それに挑戦させることで、やる気を引き出す」(河合氏)としている。また、スポーツや、趣味などを通じた仲間づくりも推進している。

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