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“建築盤業界で制御盤革新”宣言JSIA会長が目指す制御盤製作の合理化と信頼性向上活況のビル建築業界へ工期短縮・安定品質で貢献

制御盤・配電盤需要が盛り上がりを見せている。東京五輪・都市再生PJなどで建設需要が活況であるためだ。活況な中だからこそ、生産工程におけるミスを撲滅することが重要である。制御盤・配電盤メーカーの団体である日本配電制御システム工業会会長の宇賀神清孝氏は「工業会をあげてミスの低減を図るとともに、生産工程の効率化に向けて新たな方法を実現したい」と意欲を見せる。

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活況を帯びる制御盤需要、求められる品質の高まり

 制御盤・配電盤需要は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた建築業界の需要により活況だ。さまざまな建築物の建設が進められており、それらに必要な制御盤や配電盤の引き合いが高まっているためである。

 一方で、コンプライアンス(法令順守)を求める声の高まりや、トレーサビリティー(追跡可能性)を強化する動きなどが広がってきている。これは、制御盤や配電盤製作においても例外ではない。

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日本配電制御システム工業会の会長である宇賀神清孝氏(宇賀神電機 代表取締役社長)

 こうした傾向に対し、「盤内配線の選択肢を広げる取り組みをしたい」と語るのが制御盤や配電盤のメーカー団体である日本配電制御システム工業会(以下、JSIA)の会長である宇賀神清孝氏(宇賀神電機 代表取締役社長)である。

 宇賀神氏は「品質確保への要求レベルが高くなる中で、配電盤や制御盤で起こり得る不良の一つが、ねじ締め付け不良である。当然、制御盤・配電盤メーカーでも検査は行っているが、ヒューマンエラーは必ずどこかで起こる可能性がある。システムや仕組み、機構などで、『絶対に起こり得ない環境を作る』ということが重要だと考えている。JSIAとしてはそういう選択肢がないか模索を進めてきた」と述べている。

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ねじ締めが必要な通常の端子台。赤・青の油性ペンでねじ締めのダブルチェックを行う(クリックで拡大)

締め付け不良がないプッシュイン方式

 こうした中でJSIAが注目したのが、プッシュイン方式である。「当たり前のことだが、ねじ締めの不良が生まれるのは『ねじ締め部』があるからだ。プッシュイン方式を採用すれば『ねじ締め部』がなくなり、締め付け不良も起こり得ない」と宇賀神氏は考えを述べる。

 ただ、従来は採用に耐え得る技術がなかった。その中で新たに出会ったのが、オムロンの新たな制御盤用部品「Value Design for Panel」で展開する「プッシュインPlus端子台」である。「プッシュインPlus端子台」は、配線を差し込むだけで簡単に配線できる他、前面でのプッシュイン配線を可能としたため従来のねじ締め、増し締めなどの作業が不要となり作業効率も高めることができるという。

 宇賀神氏は「プッシュイン方式で、増し締めが不要になる点や作業者による作業品質のバラつきを抑えることができる点は魅力だ。作業品質の安定性を高めることができる」とプッシュイン方式の利点について語る。

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プッシュイン方式を採用したオムロンの「プッシュインPlus端子台」(クリックで拡大)

信頼性や安心感での課題を解消する取り組み

 ただ、一方で課題についても懸念する。「現状では建築業界で配電盤や制御盤にプッシュイン方式を使うための明確な基準や規格が存在しない。そのため、信頼性や安心感という意味で、顧客企業には不安感がある。建築配電盤については接触信頼性が何よりも重要だという認識で、新品は大丈夫でも20年や30年経過する中でも安心なのかという点は分かりやすく示していかなければ浸透しない」と宇賀神氏は述べている。

 こうした不安感を払拭するためにJSIAでは、プッシュイン方式に対する検討を進める他、他の工業団体との協力により基準の確立を推進。建築工事標準仕様書などにプッシュイン端子が選択肢の1つとして盛り込まれるような働きかけを進める方針である。

 一方で、宇賀神氏自身が社長を務める宇賀神電機内で、オムロンの協力により実証を推進。通常の配電盤と、プッシュイン端子の配電盤の比較などを行い、作業効率や運用性、品質の安定性などの検証を進めている。

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通常の端子とプッシュイン端子の配電盤の比較実証の様子。左がプッシュイン方式を採用したもの(クリックで拡大)

 現状では全ての配電盤内の部品がプッシュイン方式ではない他、専用の工具なども十分にそろっている状況ではなかったが一定の効果が確認できたという。実際に比較検証を担当した宇賀神電機 生産部 部長の小原義弘氏は「作業に対する“慣れ”の面で作業時間そのものはそれほど早くはなっていない。しかし、増し締めが不要でありチェック作業などの負担や時間は低減できる。また作業員による品質のバラつきを抑えられるということも確認できた」と述べている。

 今後については「作業の慣れが高まり、さらに制御盤内の機器がプッシュイン方式に統一されてくると、作業効率としても大きく向上することが期待できる。また締め付け不良の確認やそれを起こさないためのチェック作業の負担なども軽減でき、信頼性をさらに高められる点では今後に期待している」と小原氏は期待を述べている。

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比較実証を行ったメンバー。中央が小原氏、右が生産部副部長の中川昌幸氏、左が生産部の松沼朋幸氏(クリックで拡大)

 宇賀神氏は「新たな技術が生まれてくる中で、工業会としては、さまざまな選択肢を増やしていくことが何よりも重要だと考えている。プッシュイン方式が全ての領域で採用されるとは限らないが、品質への要求が高まる一方で今後の人材不足などが懸念される中では、ヒューマンエラーをなくす1つの有益な選択肢だと考える。工業会メンバーの中にはプッシュイン方式が認められれば新たなビジネスチャンスをつかむメンバーも生まれるかもしれない」と述べている。

 今後はオムロンを含むメーカーと協力しながら、プッシュイン方式の長期にわたる接触信頼性など品質保証の検証を進めるとともに、啓もうなどに取り組み、建築配電盤などについてもプッシュイン方式の価値を訴えていく方針を示している。

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提供:オムロン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月24日

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