ニュース
マウスの流産を引き起こすブルース効果の一端を解明:医療技術ニュース
東京大学は、マウスの流産を引き起こすブルース効果の原因物質の1つとして、雄フェロモンの一種である「ESP1」分子を特定した。ESP1は受精卵着床に必要なプロラクチンの分泌量上昇を抑え、それによって流産が引き起こされる。
東京大学は2017年10月13日、麻布大学との共同研究で、ブルース効果の原因物質の1つとして雄フェロモンの一種である「ESP1」分子を特定したと発表した。
ブルース効果とは、妊娠した雌マウスが交尾相手以外の別系統の雄マウスと接触することで流産が引き起こされる現象。半世紀以上前に実験用マウスで発見されたが、これまで流産の原因物質は特定されていなかった。
研究チームでは、雄フェロモンの一種であるESP1に着目した。交尾後、雌マウスが交尾相手とESP1分泌量が異なる別系統の雄マウスと接触した場合、ESP1は受精卵着床に必要なホルモン「プロラクチン」の分泌量上昇を抑え、それによって流産が引き起こされることが分かった。
今回の成果は、化学感覚シグナルであるフェロモンによる生理状態や生殖などの個体機能制御を理解する一助となる。今後、脳神経系での情報伝達や処理など、ヒトをはじめとする哺乳類でのフェロモンの受容を解明する基礎になることが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- バーチャルリアリティーシステムを使った幻肢痛の治療法を開発
東京大学は、感覚を失ったはずの手足で感じる難治性の痛み(幻肢痛)が、バーチャルリアリティーシステムを用いることで和らぐことを明らかにした。 - カルシウムイオンが睡眠と覚醒を制御する
東京大学は、神経細胞のコンピュータシミュレーションと動物実験を組み合わせることで、睡眠・覚醒の制御にカルシウムイオンが重要な役割を果たしていることを明らかにしたと発表した。 - 重粒子線放射線照射が全身に与える影響を明らかに
東京大学は、がんの放射線治療にも利用される重粒子線を照射した場合の、全身への影響について調べる新たな方法を開発した。重粒子線を体表に照射したメダカを連続的にスライスし、その切片を用いて、全身組織の変化を細胞レベルで明らかにした。 - 次世代がんワクチンで東大が治験、再発・治療抵抗性の急性骨髄性白血病向け
東京大学は、同大学医科学研究所附属病院で、理化学研究所による次世代がんワクチン「人工アジュバントベクター細胞(エーベック:aAVC)」の医師主導型治験を実施する。 - 体温維持に必要な寒冷感知タンパク質のリン酸化と遺伝子の立体構造
東京大学は、寒冷時に熱産生遺伝子の発現を急速に活性化して体温を維持するには、熱産生をつかさどる遺伝子DNA(クロマチン)の急速な立体構造変化が必須であることを解明したと発表した。