ブリヂストンが技術センター拡充に300億円を投資、試作から走行テストまで迅速に:東京モーターショー 2017
ブリヂストンは「第45回東京モーターショー 2017」において、東京都小平市の同社技術センターに300億円を投資して、イノベーションを加速させることを発表した。
月曜日に思い付いたタイヤのアイデアを、週末にテストコースで試せる環境に――。ブリヂストンは「第45回東京モーターショー 2017」(プレスデー:10月25〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日)において、東京都小平市の同社技術センターに300億円を投資して、イノベーションを加速させることを発表した。
技術センターの拡充は、グローバル研究開発体制の整備の一環で2015年から進めている。今回の投資では、同センターの敷地内にアイデアを素早く形にして検証できるラボや試作施設、テストコースを設ける。2018年12月から新施設の建設工事を開始し、2020年の完成を予定している。
今回の投資により、4つの施設を新設する。1つは「イノベーションセンター」で、研究者やエンジニアが新しいアイデアや構想を出しあい、従来技術とデジタル技術を融合して新材料や技術を創造していく。2つ目は試作施設「Rapid Proto」で、イノベーションセンターで生み出された技術や材料を少量かつ短期間で具現化する役割を担う。
具現化した材料や技術は、「先進評価ラボ」や「ミニプルービンググラウンド」で検証する。先進評価ラボは、さまざまな環境や路面状況を再現する室内評価設備を置く。部品単体から車両全体での複合評価まで行う。シミュレーション技術も駆使する。
路面の状況に応じてパターンや材質を変更したり、パンクした時に自己修復したりできるタイヤを開発したいと夢を語る、PSタイヤ開発第1部 構造設計第3ユニットの三好茜氏。今回の投資によって、夢やアイデアを出すことは重要。いち早くアイデアを試作して確かめ、さらにアイデアを生んでいくようなサイクルで研究開発を進められる環境を整備する(クリックして拡大)
ミニプルービンググラウンドは、開発者自ら運転し、アイデアの実車評価やコンセプトの検証を行うために設ける。「シミュレーション技術が進化して机上での計算が可能になっても、人間がどう感じるか、感性のところは確かめられない。自分の身体で確認する必要がある」(ブリヂストン 技術戦略本部長の田村康之氏)。取引先や大学など社外からの意見を集める場としても活用する。
ブリヂストンは、創業時の地下足袋に始まり、電気自動車向けに採用された狭幅大径の次世代低燃費タイヤ「ologic(オロジック)」や、タイヤがセンサーとなって路面の状態を判定する技術「CAIS(カイズ)」、空気の充填(じゅうてん)が不要なタイヤ「エアフリーコンセプト」などイノベーションを生み出してきた。自動車業界が、100年に一度といわれる大きな変化に置かれている中でも、今後50年も継続して価値を提供できる企業であることを目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- タイヤの転がり抵抗を測る日本唯一の“原器”は小平市にあった
東京都小平市にあるブリヂストンの中核研究開発拠点「技術センター」には、新たなタイヤを開発するためのさまざまな試験装置が設置されている。同社が報道陣に公開した、タイヤの転がり抵抗を計測する日本唯一の“原器”と呼べるような標準試験機や、時速400kmで走行中のタイヤの接地面を計測できる「アルティメットアイ」などについて紹介しよう。 - タイヤがセンサーになる技術を世界初の実用化、2020年までに一般車に展開
ブリヂストンは、タイヤで路面状態をセンシングする技術「CAIS(カイズ)」が冬季の高速道路管理に採用されたと発表した。今後は、鉱山用トラックやバス、航空機などでの活用も見込んでおり、2020年までに一般の乗用車への展開も目指すとしている。 - 天然ゴムより高性能の合成ゴム、ブリヂストンがバイオマスから生産
ブリヂストンは、天然ゴムとほぼ同等の分子ミクロ構造を達成したポリイソプレンゴムの合成に成功した。天然ゴムと近い性質を実現したため、合成ゴムに置換することが可能になる。生産コストも「市況によるが、天然ゴムより少し高い程度」(ブリヂストン)に抑えたという。 - 人工知能でタイヤ成型工程の生産性を2倍に、ブリヂストンが進めるICT工場
タイヤ大手のブリヂストンはタイヤの生産性の向上に向け、ICT(情報通信技術)や人工知能技術を搭載した新たな生産システムを導入した。タイヤ成型工程において15〜20%の生産性向上を実現できたという。 - ブリヂストンがデータサイエンティストの人材育成プログラムを開設
ブリヂストンは、データサイエンティストを育成するための研修プログラムをSAS Institute Japanと共同で開設し、運用を開始した。