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「第4次産業革命」の経済効果は132兆円、どうする日本の製造業?情報通信白書2017を読み解く(後編)(4/4 ページ)

総務省が発行している「情報通信白書2017」から第4次産業革命に対する動きを読み解く本稿。後編では、第4次産業革命による経済的インパクトなどを紹介する。日本の製造業が第4次産業革命の世界的な流れの中で後れを取らないために必要なこととは何だろうか。

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IoT化した2030年の日本、132兆円の経済効果

 IoTやAIの導入や企業の改革が進んだ場合、その経済効果はどれくらいになるのだろうか。情報通信白書2017では、2011年から2030年までの市場規模、実質GDP、就業者数といった各種指標の予測値を、内閣府の中長期経済予測に基づくベースシナリオとIoT・AIの活用が進展する場合の経済成長シナリオとで比較することで第4次産業革命の経済的なインパクトを分析している。

 推計の時間軸を、2016年、2020年、2025年、2030年として内閣府の中長期経済予測に基づくベースシナリオとIoTやAIの活用が進展する場合の経済成長シナリオとで比較した。

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IoTやAIによる経済成長の将来推計 推計の時間軸とシナリオ(クリックで拡大)出典:情報通信白書2017

 IoTやAIが経済成長にどの程度のインパクトを与えるか推計したところ、2030年に実質GDPを132兆円押し上げる効果があることが明らかになった。

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実質GDPにおける2030年までのIoT・AIの経済成長へのインパクト(クリックで拡大)出典:情報通信白書2017

 業種別に市場規模へのインパクトを見ると「製造業」「商業・流通」「サービス業、その他」において経済成長シナリオとベースシナリオとの差が大きくなっており、これらの業種におけるIoT化および企業改革の進展が大きなインパクトを持つと考えられる。

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市場別、業種別の2030年までのIoT・AIの経済成長へのインパクト(クリックで拡大)出典:情報通信白書2017

 2030年までのIoTやAIの経済成長へのインパクトに関して、就業者数についても推計を行った。ベースシナリオでは、人口減少に伴い就業者数は2030年に5561万人まで減少すると見込まれる。経済成長シナリオでは、2030年の就業者数を6300万人と推計している。人口減少が進むことは避けられないものの、IoTやAIの導入による労働参画の促進や労働の質向上やイノベーションなどによる一人当たりの生産性向上によってマクロ的な人手不足は避けられると考えられる。最終的にIoT化(IoTやAIの導入を含むICT投資)および阻害要因の解消、データ流通時代に対応した企業改革が進めば、2030年に実質GDPを132兆円押し上げ、人口減少下でも持続的な経済成長は可能だという。

 情報通信白書2017では「第4次産業革命は単なる技術革新にとどまらず、社会全体に変革をもたらし、経済成長にも大きく貢献する可能性がある。その可能性を現実のものとするため、課題を含めた日本の現状に着目し、解決に向けて取り組む必要があると考えられる」と総括している。


 各種調査で見てきたように、一部の先進企業を除いて、日本の製造業では第4次産業革命に対する消極的な姿勢が目立つ。しかし、その競争力は決して各国に劣っているわけではない。

 これまでの産業革命の歴史をたどると、それぞれの革命を経て経済の構造や企業活動が大きく変化した。また、各産業革命において覇権を取った国や企業は異なる。第4次産業革命はまだ始まったばかり。日本の製造業の自発的な意識改革が望まれる。

筆者紹介

翁長潤(おなが じゅん)

フリーライター。証券系システムエンジニア、IT系雑誌および書籍編集、IT系Webメディアの編集記者の経験を生かし、主にIT・金融分野などで執筆している。


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