ドローン活用で農家の収益3割増も、ヤンマーとコニカミノルタが新事業:製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)
ヤンマーとコニカミノルタは、ドローンを使って農作物の生育状況をセンシングした結果を基にコンサルティングなどを行う「農業リモートセンシング事業」を合弁で始める。新設のサービス事業会社を中心に、「世界初」(ヤンマー)の農業リモートセンシングに基づく部分施肥サービスなどを含めて、2023年度に約100億円の売上高を目指す。
農業リモートセンシングの仕組み
農業リモートセンシングは植物の反射特性を生かした技術である。植物は、赤色の可視光を吸収して光合成を行う一方で近赤外線は吸収せず反射する。もし、赤色可視光の吸収度合いを検知できれば植物の元気度を把握できるようになる。そこで検討されたのが、カメラの分光技術を応用して反射の大小を数値化する「NVDI(正規化植生指標)」という指標だ。NVDIからは、生育状況と高い相関を持つ葉中の窒素含量、食味診断と高い相関を持つタンパク含量、出穂時期や収穫時期の予測指標となる生育の活性度を確認できる。
ただし、従来の農業リモートセンシングに用いられてきた衛星写真、航空機やヘリコプターによる航空写真では、雲による障害や低解像度のため、1枚1枚の圃場を詳細にセンシングできないなどの課題があった。
コニカミノルタは、業界標準器として知られる同社のSPADの計測値と、NVDI向けに独自に開発した画像解析アルゴリズムの間で極めて高い相関があることを確認。航空写真よりも低空からの画像をドローンで撮影することにより、農作物に対して手作業で計測するSPADと同等の精度で生育状況などを把握できる圃場のNVDIを測定する技術を確立した。
コニカミノルタは、SPADとの間で極めて高い相関がある独自の画像解析アルゴリズムによって得たNVDIにより、ドローンによる農業リモートセンシング技術を確立した(クリックで拡大) 出典:ヤンマー、コニカミノルタ
今回の開発技術では、30万画素のカメラを搭載するドローンを使って、30mの高さから圃場を撮影。ドローンの1回の飛行時間に当たる約8分で2ha、1日であれば30haの圃場を撮影できる。ドローンはDJI製を用いているものの「ドローンの性能向上は日進月歩であり、その時々で最適な市販品を使っていきたい」(コニカミノルタの説明員)という。
農業リモートセンシングの結果から圃場の生育状況を見える化し、このデータを基にファームアイが最適な施肥設計などのコンサルティングを行う。「従来は非常全体に対して無人ヘリで施肥を行っていたが、農業リモートセンシングで圃場の状態が分かれば、施肥すべき場所だけに部分施肥すればよくなる。これによって肥料の使用量を削減する効果も生まれる」(吉田氏)。
また、農業リモートセンシングの結果は、ヤンマーの営農支援システム「SMARTASSIST」によってデータ共有することも可能だ。収穫後翌年に土壌を耕す際に行う元肥設計でも、農業リモートセンシングを活用できることになる。
2023年度に売上高100億円を目指す
今後の農業リモートセンシングの開発ロードマップとしては、コニカミノルタがカメラの小型化や自律飛行小型ドローンの実用化による性能向上/コスト削減、ヤンマーはデータに基づく営農支援に向けた農業機械の供給/開発、SMARTASSISTとのリモート連携などを挙げている。
また、2023年度に売上高100億円を達成するには、国内稲作農家以外への展開拡大も必要になる。2020年をめどに、小麦、大豆、さとうきびなどに広げるとともに、東南アジアを中心とした海外展開も進める。またセンシング技術についても、ドローンによるNVDI計測の他、農作業者の動きを見たり、害獣の侵入防止などセキュリティに用いたりするカメラ技術などを検討しているという。
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