東芝メモリの譲渡契約を締結、売却先はアップルやSKハイニックス含む日米韓連合に:製造マネジメントニュース
経営危機の東芝は、ベインキャピタルを中心とした企業連合で設立した買収目的会社「Pangea」と東芝メモリの譲渡契約を締結した。Pangeaは日米韓の企業連合により構成され、ベインキャピタルの他、HOYA、SKハイニックス、アップル、シーゲイトなどが出資する予定。
経営危機を迎えている東芝は2017年9月28日、債務超過解消のカギをにぎるメモリ子会社「東芝メモリ(TMC)」について、米国のファンド企業 Bain Capital Private Equity(以下、ベインキャピタル)を中心とする企業連合で構成される買収目的会社と譲渡契約を締結したと発表した。
既に東芝では2017年9月20日にTMCをベインキャピタルを中心とした買収目的会社「Pangea」に譲渡する方針を示していた(※1)が、今回は正式に譲渡契約を締結した他、買収目的会社の出資企業などが明らかになった。
(※1)関連記事:二転三転した東芝メモリの売却、2兆円でベインキャピタル中心の企業連合に決定
買収目的会社「Pangea」は、東芝の再出資分3505億円、ベインキャピタルの2120億円、HOYAの270億円、韓国のSK hynix(以下、SKハイニックス)の3950億円、米国のApple(以下、アップル)、Seagate(以下、シーゲイト)、Kingston Technology、Dell Technologies Capitalの4社からの4155億円を資金調達する予定だ。加えて、金融機関から6000億円の借り入れを実行する予定だとしている。
ただ、買収企業グループに、メモリ事業の競合となるSKハイニックスが入ることには、技術流出の危険性の観点や各国の競争法上の問題から、各所が難色を示していたため、SKハイニックスの資本参加には厳しい条件が突き付けられている。
SKハイニックスとTMCの間には、最低で10年間のファイアウォールが設置され、SKハイニックスのTMCの機密情報へのアクセスが制限されることになる。さらにSKハイニックスには融資の一部を株式に転換する権利が付与されているが、今後10年間はTMCまたはPangeaの10%以上の議決権は保有できない。また、この転換権の行使には各国の競争法当局の承認が必要だとしている。
最終的な株式譲渡後はベインキャピタルとTMCの経営陣を中心に事業運営を進めていく計画。アップルやシーゲイトなどの米国の4社については、TMCの普通株式や議決権を取る計画はないとしている。買収目的会社における日系企業の出資比率は過半を超えるとしており、今後もその状態を維持する方針。さらに東芝が再出資して保有することになる議決権行使については、中立的な機関で買収目的会社に将来的な資本参加も検討する産業革新機構と日本政策投資銀行に対し、指図権(議決権行使に関する方法を株式保有者以外が指図する権利)を付与するとしている。
関連記事
- 二転三転した東芝メモリの売却、2兆円でベインキャピタル中心の企業連合に決定
経営危機の東芝において存続のカギを握る東芝メモリの売却先が米国のファンド企業であるベインキャピタルを中心とした企業連合に決まった。譲渡金額は約2兆円となる見込み。 - 迫る破綻のカウントダウン! その時、企業再生のプロはこうやって企業を再生する
グローバル競争が過熱する中、製造業でも競争に敗れ苦境に立たされる企業は数多い。毎年のように企業決算で叫ばれる「構造改革」や「経営再建」の舞台裏は果たしてどうなっているのか。ゼネラルモータースや日本航空、ライブドアなど多くの企業再生を手掛けてきた企業再生のプロであるアリックスパートナーズが、各業界の状況について解説する。初回となる今回は企業再生の手法について紹介する。 - なりふり構わぬ東芝、メモリ事業会社は完全売却へ
経営危機の東芝は、2016年度第3四半期の業績見通しと、大幅な減損で債務超過の原因となっている原子力事業の対応策について発表。生き残り策として「20%未満」としてきたメモリ事業会社の株式売却を「マジョリティーにこだわらない」とし、100%売却もあり得るという方向性を示した。 - 東芝、逆転のシナリオは「第4次産業革命」にあり
経営危機の東芝は、新たに「今後の東芝の姿」を発表。メモリ事業の完全売却や海外原発事業整理後の成長のシナリオについて示した。 - アップルにあって日系電機メーカーにないものは何か?
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回は苦境が続く日系エレクトロニクス産業について解説する。 - 「アメーバ経営」とは何か
グローバル競争の激化により多くの日系製造業が苦しむ中、にわかに注目を浴びているのが「アメーバ経営」だ。京セラをグローバル企業に押し上げ、会社更生法適用となったJALを復活させた原動力は何だったのか。本連載では、「アメーバ経営とは何か」を解説するとともに、その効果を示す事例としてJAL整備工場での変化について紹介する。第1回となる今回は「アメーバ経営」そのものを紹介する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.