二転三転した東芝メモリの売却、2兆円でベインキャピタル中心の企業連合に決定:製造マネジメントニュース
経営危機の東芝において存続のカギを握る東芝メモリの売却先が米国のファンド企業であるベインキャピタルを中心とした企業連合に決まった。譲渡金額は約2兆円となる見込み。
経営危機を迎えている東芝は2017年9月20日、債務超過解消のカギをにぎるメモリ子会社「東芝メモリ(TMC)」の売却先を、米国のファンド企業 Bain Capital Private Equity(以下、ベインキャピタル)を中心とし、日系企業や海外企業が参画する買収目的会社とすることを決めた。譲渡価格は合計2兆円となる予定で、東芝は債務超過の解消を図るとともに、得た譲渡金額から3505億円をTMCに再出資して持分法適用会社とし、経営への一定レベルの影響力は維持する狙い。
東芝は2017年3月期(2016年度)に債務超過に陥り、2018年3月期(2017年度)までに、債務超過を解消できなければ上場廃止になる。債務超過を回避するために2017年度中にメモリ事業であるTMCを売却する方針を示しており、2017年6月には1度、産業革新機構、ベインキャピタル、日本政策投資銀行(DBJ)からなるコンソーシアムを優先交渉先と定めていた。しかし、メモリ事業で協業している米国Western Digital(以下、ウエスタンデジタル)から売却停止を求める訴訟を提起され、この交渉が暗礁に乗り上げた。
タイムリミットが迫る東芝はその後、係争状態にあるウエスタンデジタルを売却先とする方向で協議を進めたが、この交渉もうまくいかず、最終的にウエスタンデジタルの訴訟を課題視する企業以外で組成される買収目的会社に対し売却を進めることで最終決議をしたという。
買収目的会社には、ベインキャピタル、日系企業、海外企業などが出資する予定。買収目的会社の名称は「Pangea」で、諸大陸が分裂する前につながっていた超大陸をイメージしたと考えられる。
今後は各国の競争法などの手続きを経て、2017年度中の譲渡手続き完了を目指す。譲渡が完了した場合、2017年度で約1兆800億円の税引き前損益が改善する見込み。課税影響を加味しても約7400億円の利益増加が見込まれ債務超過状態を解消できるという。
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