ステレオカメラ5個で秋田の豪雪に挑む、リコーとAZAPAが自動運転の公道実験:自動運転技術
リコーとAZAPAは、秋田県仙北市でレベル3の自動運転の共同実験を開始する。リコー製のステレオカメラとライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)に、経路生成や回避行動などAZAPAの制御技術を組み合わせて、自動運転車の課題抽出と技術的な解決に取り組む。
リコーとAZAPAは2017年9月19日、秋田県仙北市でレベル3の自動運転の共同実験を開始すると発表した。リコー製のステレオカメラと開発中のライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)に、経路生成や回避行動などAZAPAの制御技術を組み合わせて、自動運転車の課題抽出と技術的な解決に取り組む。
実験の実施期間は2017年10月〜2018年3月までで、仙北市内にあるあきた芸術村の駐車場や周辺の公道を走行する。実験車両は緊急時の操作に備えてドライバーが運転席に着席するが、基本的には車両側で加減速や操舵(そうだ)を制御する。
仙北市は国家戦略特区に指定された地域の1つ。「近未来技術実証特区」として、ドローンによる図書配送や無人運転バスの運営など実証実験を誘致している。リコーとAZAPAは同市での実証実験を通じて、レベル3の自動運転の公道走行や、降雪地域での自動走行、交通インフラとの協調などの課題を洗い出す。
実験車両は画像による全方位センシング技術の確立を目指したもの。車体の前後左右にステレオカメラを搭載しており、バンパーの左右両端にはライダーを装着する。前方監視には、さらに遠距離を認識できる別のステレオカメラも組み合わせている。
これにより、障害物の多い複雑な環境におけるシステムの判断の支援や、白線や路肩を識別することによる運転可能領域の検出を行う。また、画像の特徴点から車両の動きを算出して自車位置の推定も可能だという。こうした認識技術により、標識や重なった複数の物体を見分けて横断歩道などで停止を判断したり、対向車両を認識した追い越しや、安全な交差点の進入を実行できるようにする。
リコーのグループ会社であるリコーインダストリアルソリューションズは、デンソーと共同で「世界最小」(リコー)のステレオカメラを開発した。既に、ダイハツ工業の軽自動車「タント」などに搭載されている。リコーの生産拠点である花巻生産センターでは、2016年10月から2017年4月までに累計8万台を出荷した。
開発した左右のカメラの間隔は80mmで、SUBARU(スバル)やスズキが採用するステレオカメラよりも大幅に短縮している。撮像のゆがみを補正する光学設計や、キャリブレーション技術、リアルタイムな視差補正によってカメラ間隔の短縮を実現した。
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