車載準ミリ波レーダーは欧州製から日本製へ、新型「カムリ」や「CX-5」が採用:安全システム(2/2 ページ)
デンソーが新たに開発した24GHz帯準ミリ波レーダーが、トヨタ自動車の新型「カムリ」に採用された。マツダの新型「CX-5」も古川AS製の24GHz帯準ミリ波レーダーを採用している。従来は欧州製が多かった市場だが、国内サプライヤーが相次いで参入している。
マツダの「BSM」と「RTCA」は古河ASの準ミリ波レーダーを採用
マツダは、新型カムリのBSMやRCTAと同様の機能を業界に先駆けて採用してきた自動車メーカーだ。2008年1月発売の「アテンザ」では、24GHz帯準ミリ波レーダーを用いて車両後側方を検知する「リアビークルモニタリングシステム(RVM)」を国内初採用。その後名称を「ブラインドスポットモニタリング(BSM)」に変更し、新型カムリのRCTAと同じく駐車場から後退する際に左右後方から接近してくる車両を検知する「リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)」を兼ね備えるようになっている。
2017年2月発表の新型「CX-5」にもBSMとRCTAは採用されているが、24GHz帯準ミリ波レーダーは古河ASの「周辺監視レーダ」を用いている。周辺監視レーダは、車載ミリ波レーダーで一般的なFMCW(周波数変調連続波)方式ではなくパルス方式を採用した。
パルス方式は、距離と相対速度を時間軸、周波数軸の2軸で検知する方式で、車両や自転車、歩行者などの複数物標に対して、個別に距離、相対速度を検知できるという。角度を測定する測角方式についても、4ビームの位相情報から角度を算出するデジタルビームフォーミングを採用したとする。一方、FMCW方式は、周波数をベースに距離と相対速度を検知する方式であり、強反射物でターゲットの受信信号が埋もれてしまう懸念がある。
周辺監視レーダは、パルス方式の採用と側角方式の工夫により、車両や自転車、歩行者などを正確かつ同時に検知できるとしている。
従来、24GHz帯準ミリ波レーダーはドイツのヘラー(Hella)など欧州サプライヤーの独壇場だった。その市場に国内サプライヤーであるデンソーや古河ASが参入したことで大きな変化が起こるかもしれない。また、24GHz帯準ミリ波レーダーと同様に車両周辺を広範囲に検知する用途で79GHz帯のUWB(超広帯域)ミリ波レーダーの開発も進んでおり、ADASや自動運転技術向けセンサーの開発動向は激しさを増している。
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