SUPER GT勝率5割のニスモ柿元氏、「結果が全ての覚悟」と「天“知”人」:モータースポーツ(3/3 ページ)
ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(ニスモ)の柿元邦彦氏が、過去のカーレースの出来事を紹介しながら、最高のパフォーマンスを発揮して過酷な戦いを勝ち抜くための「天“知”人」や、人材育成について語った。
「結果が全てという覚悟」と、人の気持ちへの配慮
柿元氏は、「夢を持って、『こうしたい』『こうありたい』と思わなければ何も始まらない。頭の中に、自分の望む姿や夢を描くことが大事」だと言う。しかし、現実の社会ではそうしていても、自分が強く望んだ環境や仕事に縁がないこともある。
柿元氏は2008〜2011年の間、東海大学で工学部教授を務めていた。その中で学生の就職活動の指導にも当たっていた。リーマンショック後の経済不況真っただ中であり、就職活動に苦戦していた当時の学生によくしたアドバイスがあったという。
「たとえやりたい仕事に就けなくても、とにかく、今自分がやるべき仕事をしっかりやりなさい。誰かが必ず見ているから」
「与えられた仕事、足元の仕事をしっかりやりなさい。それで必ず道が開けるから。自分がやりたい仕事ができるから」
実際、卒業し就職していった学生の中には、「言われた通りにやっていたら、本当に、やりたい仕事ができた」と連絡をくれる人がいるという。また、「今やるべきことをやることが大事」という姿勢の大切さは、世の中の方々で語られていると柿元氏は述べる。
そしてリーダーとなる側は、「現実を踏まえ、皆のやる気の出る目標を与えること」「足元の仕事をしっかりやりながら成長している部下が望む姿を実現してあげること」が大事であると柿元氏は言う。
柿元氏はその考えがまさに「適材適所」であって、会社においてもカーレースにおいても、そうしていかないと結果が出せないと考えているという。
「結果が全てという覚悟」が大事で、「一生懸命やってきた」というプロセスはその次であると柿元氏は言う。しかし、決してプロセスが「大事ではない」ということではなく、あくまで優先順位の話。「結果が全て」だからと、敗者への配慮がなければ、人は育たず、技術の進歩もないとも述べる。かといって、人は放っておけば、情に偏重した考え方になり、気持ちに迷いも生じる。「迷いが生じることは、結果を出している人に失礼と思わねばならない」(柿元氏)。そういったことのバランスを取る意味において、「結果が全てという覚悟を持つこと」が必要であると、柿元氏は本講演を締めた。
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