2016年国内の3Dプリンタ出荷台数は減少、造形受託や造形材料の市場は成長傾向:3Dプリンタニュース(2/2 ページ)
IDC Japanは日本国内における2016年の3Dプリンテイング市場動向と2021年までの予測について発表。デスクトップ機種の売上と出荷台数は減少傾向であるが、プロフェッショナル機種については今後、少しずつ増加していくと見ている。受託製造や保守サービス、造形材料の市場については順調に成長している。
3Dプリンタの利用そのものは増えているが……
3Dプリント関連サービスや造形材料市場は成長傾向だ。これらの市場は今後も成長を維持すると同社では見ている。プロフェッショナル3Dプリンタの出荷と稼働数の増加に伴い、修理や保守の市場も拡大し、造形材料の消費量も増加するだろうと同社は考える。
今後5年間で、日本における3Dプリンタの市場は全体的に少しずつ伸びていくが、爆発的な伸びは、技術的ブレイクスルーなどが起こらない限りは、現時点では期待できないという。「プロフェッショナル機種は1000万円を超える高額なものもあり、頻繁に買い替えるものではない」(三谷氏)。現在、国内の3Dプリンティング市場全体は300〜400億円くらいの規模だが、2021年には500〜600億円ほどにまで成長するだろうと予測する。
3Dプリンタの認知度が向上したことで、3Dプリンタの利用そのものは増えているという。しかし「自分や自社では購入せず、受託造形を利用するケースが今も多く見られる。受託造形の利用は今後も着実に伸びていきそうだ」と三谷氏は述べた。受託造形の利用増加は、材料消費量の増加にもつながっていくだろうとしている。
IDCによるヒアリングによれば、3Dプリンタの利用目的は、ほぼ試作であり、航空機メーカーなどの大物部品を除いて、最終製品の製造(直接製造)における用途はあまり見られないという。今後も試作での需要が中心となりそうだが、最終製品製作での活用が増加していけば、市場はより急速に拡大する可能性があるとしている。
「3Dプリンティングは従来技術の置き換えではない。従来技術では作成できない複雑な形状のものが造形可能な技術である。これまでの技術では作成できなかった構造のものを作成することにより、製造プロセス改革や新たなビジネスモデルを確立することが可能である。3Dプリンティングの導入によって、どのような付加価値を生み出せるかを見極めることがポイント。現在の造形精度や速度、材料の制限下でも、そのような価値が提供可能な分野は存在する。よって今後も、3Dプリンタに関して正しい認知の拡大が課題である」(三谷氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “プリンタ界の巨人”の進撃始まる、閉じられた3Dプリンタビジネスに穴
日本HPは「第28回 設計・製造ソリューション展(DMS2017)」において同社の業務用3Dプリンティングシステム「HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューション」の実機を展示。機能の詳細や使い方、造形サンプルなど紹介。米HP 3Dプリンティング担当プレジデントのステファン ナイグロ氏は「ライバルは射出成形」だと語る。 - 3Dプリンタ“ブーム”は終えんも、製造業の活用は着実に拡大へ
IDC Japanは、国内3Dプリンティング市場の2013〜2015年の実績と2020年までの予測を発表した。一般消費者向けのデスクトップ3Dプリンタ市場は、ブームの終えんによって縮小したものの、企業ユーザー向けのプロフェッショナル3Dプリンタ市場と付随する関連サービスと3次元造形材料の市場は今後も着実に拡大するという。 - 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。 - STLが直接ソリッドのCADで使える、3Dプリンタ/スキャナーの活用増加を見据えて――Solid Edge
シーメンスPLMソフトウェアが発表したSolid Edge ST10は、STLなどファセットデータが、ソリッドCADの環境で直接行える。併せてトポロジー最適化の機能も実装した。同製品は2017年夏季の出荷を予定する。 - いよいよ日本でも販売する“10倍速い”3Dプリンタ「HP Jet Fusion」、ボクセルで広がる可能性
従来の造形方式と比較して10倍速いという、米HPが独自開発した「HP Jet Fusion 3D」が日本でも販売される。ボクセル単位でのデータが扱えることによって、部品内部に細やかなカラー情報が仕込める他、センサーなども仕込めるようになるとしている。