STLが直接ソリッドのCADで使える、3Dプリンタ/スキャナーの活用増加を見据えて――Solid Edge:CADニュース
シーメンスPLMソフトウェアが発表したSolid Edge ST10は、STLなどファセットデータが、ソリッドCADの環境で直接行える。併せてトポロジー最適化の機能も実装した。同製品は2017年夏季の出荷を予定する。
シーメンスPLMソフトウェアは2017年6月19日、ミッドレンジ3D設計システム「Solid Edge ST10」に関して記者発表会を開催した。同製品は2017年5月8〜11日に米国で開催した「Siemens PLM Connection Americas 2017」で発表したもので、今回は日本市場向けの発表だ。同製品は同年夏季の出荷を予定する。
シーメンスPLMソフトウェア Main Stream Engineering アジア太平洋地域 担当バイスプレジデント Go Say Tiam(ゴ−・セイ・ティアム)氏は、今日の製造業のトレンドとして「高速・短納期での製造」と「ファセットモデリングの重要性の拡大」を挙げた。またアナリストが2016年に発表している今後の業界展望について、次のように紹介した。
- 3Dスキャンの市場は2022年までに60億規模へ(MarketsandMarkets、2016年6月)
- 今後1年間で材料費が5%ほど上昇すると考えている(Sikich、2016年)
- 2025年には射出成型による樹脂製品が3Dプリント製に置き換わる(マッキンゼー、2016年)
「3Dスキャナーはお手軽になってきたが、ソリッドで扱えるようにするには、従来、手間と時間が結構かかっていた。また3Dプリントの価値を十分に引き出すためには何をすべきか考えた」(ティアム氏)。
Solid Edge ST10では、ファセット(ポリゴンデータ)とソリッド(B-rep)を3D CADの環境で同時に扱えることが特長だ。Solid Edgeが採用する、シーメンスのモデリングカーネル「Parasolid」の最新バージョン「Parasolid v29.0」によって実現した技術だ。3Dスキャナーで取り込んだデータを扱うリバースエンジニアリングや、3Dプリンタによる部品製作の需要が高まる中での機能強化だ。
STLなどファセットのデータをSolid EdgeのソリッドCADの環境にそのまま持ってきても、ソリッドCADの機能を利用して穴あけやボス追加といった形状編集作業が直接ができる。ファセットにある面や穴などの要素は、Solid Edgeの機能で定義づけをすることで認識させる。
併せて、トポロジー(位相)最適化機能も追加した。想定荷重と、質量の低減割合を指定することで最適な形状を自動的に生成する機能だ。こちらは3Dプリントで直接活用されることを想定しているという。
Solid Edge ST10は、外部の3Dプリントサービスとの連携機能も備える。オンラインサービス上で外部サービスに発注でき、見積もり算出と納期回答もそこからすぐ得られるという機能だ。こちらは欧米のサービスのみでの対応だが、日本やアジアでの展開も検討中だということだ。
シーメンスPLMソフトウェアの傘下企業であるメンター・グラフィックス(Mentor Graphics)が開発した流体解析ツール「FloEFD」も実装した。3D CADの環境の中で、自動メッシュ技術と簡易な操作で高度な流体解析ができるツールだ。「今秋には、Solid EdgeとFloEFDについて、もう一歩上のインテグレーションが発表できると思う」(シーメンスPLMソフトウェア マーケティング本部 榑谷悦朗氏)。
「Solid Edge」は永久ライセンスの他、月間のレンタル利用ができる「マンスリーサブスクリプション」も備える。マンスリーサブスクリプションではWeb上にランディングページを構え、購買にオンライン決済を採用したり、学習サイトを設けたりなどオンラインでの取り組みにも力を入れてきた。2013年から月極ライセンスを備える影響もあってか、Solid Edgeについては中小規模の企業の他、「個人事業主の利用が圧倒的に多い」とシーメンスPLMソフトウェア チャネル営業本部 本部長の森田勉氏は述べた。「大手企業はもちろん、中小企業にとっても使いやすい形を追い求めていきたい」(森田氏)。
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