外資CADベンダー各社の“推し技術”に違いあり、ポリゴンとソリッドの歩み寄りも:DMS2017まとめ(3/4 ページ)
2017年6月21〜23日、東京ビッグサイトで開催された「第28回 設計・製造ソリューション展(DMS2017)」に出展していた、外資系の主要CADベンダーや国産CADベンダーの展示製品や傾向について、IoT(モノのインターネット)、AR/VRといった技術キーワードも交えて紹介する。
モデリング技術に大きな動きが
一見同じ3Dデータであっても、ポリゴンとソリッドでは出生や生い立ちが異なり、データ構造も大きく異なっている。これまでの3D CADでは、当然、両者のデータは全く別物として扱われてきた。ここ数年間で、3Dプリンタでのデータ利用を考慮したSTLのインポートやエクスポートには対応してきたが、ソリッドCADの機能でポリゴンデータの修正を直接行うことは不可能だった。
ポリゴンをソリッド化する手段は一応あるが、それほど簡単ではなく、特に複雑なデータとなるほど相当な手間が掛かる。一般的には、「ポリゴンデータはCGソフトで編集」「3D CADにポリゴンを取り込んだら、参照データとして使う」「ソリッドで作ったデータをポリゴンに変換して3D出力する」といったことが通常だった。
モデリング技術そのもので、独自の大きな動きがあったのがシーメンスだ。同社のモデリングカーネル「Parasolid」の最新版によるもので、ポリゴン(ファセット)とソリッド(B-rep)が同じ環境で扱えるという「コンバージェントモデリング」という技術で、いままで存在していた3Dデータ技術の壁を1つ超えたような形だ。今回、同社のミッドレンジ3D CAD「Solid Edge ST10」、ハイエンド3D CAD「NX11」で実装している(関連記事:STLが直接ソリッドのCADで使える、3Dプリンタ/スキャナーの活用増加を見据えて――Solid Edge)。
トポロジー最適化は、アルテア・エンジニアリングがサーフェスCAD(NURBSモデラー)「solidThinking」にいち早く実装していた。ソリッドCADについては、現在はダッソー・システムズの保有技術である「TOSCA」など別のソフトウェアと連携して利用するものであり、かつ廉価な仕組みではなかった。
2013年にはダッソーがTOSCAの開発元であるFE-DESIGNを買収し、その後、CAEの「SIMULIA」に統合している。3D CADのCATIAとしては「3DエクスペリエンスR2017x」でトポロジー最適化に対応した。さらに、トポロジー最適化で導き出した形状をARでレビューする仕組みも提案している。
2016年1月にはSOLIDWORKSでトポロジー最適化機能「Xdesign」の概要を発表、2017年に入ってからバージョン2018で実装と発表している。
オートデスクは2015年10月にリリースした「Inventor 2016 R2」からトポロジー最適化機能「シェイプ ジェネレータ」を実装した。
Solid Edgeについては、2017年リリースのST10でトポロジー最適化を実装する。
各社の3D CADで発表し出しているトポロジー最適化機能だが、そこで導き出す形状データは基本的にポリゴンである(TOSCAはIGES変換することでソリッドCADの環境に取り込むことが可能だ)。そしてトポロジー最適化で生成した3Dデータをソリッドの環境で直接修正したいというニーズは予想できる。
3Dプリンタ/スキャナーのエントリー機種が設計現場に広がってきており、そこでポリゴンデータの流通が今後、具体的にどれほど増えていくのか、数年で爆発的に増えていくものなのか、実際のところは分からない。ただし、以前に比べて、設計現場でポリゴンデータに触れる機会が増えてきていることは確かだ。
DMSには出展していない企業の製品だが、同展示会開催の少し前、ポリゴンCGソフトの「Shade 3D」の上位版でCAD機能を実装したと発表している(関連記事:ShadeがPC-98時代からの30年で初のCAD機能、VR向けレンダリングにも対応)。モデリング機能において、ポリゴンとソリッドが大きく歩みよるような動きが、今後も各社で引き続き出てくる予感がする。
「2Dから3Dへ」は永遠のテーマ?
「2Dから3Dへの移行」というメッセージは、DMSのCAD関連の展示を見ていくと、どこかで必ず見かけてきた。1990年代後半に3D CADが普及し出して以来、ずっとずっとあるテーマだ。特に、2Dデータがメインであれば、印刷した紙(アナログ)による運用がかなりの比率で残っているということになる。
今回、「2D CADユーザー、あるいはこれまで全くCADに触れたことがない人」を明確に対象としていたのが、ソリッドワークスだ。ただし同社の場合、実際にはSOLIDWORKSなどの3D CADを使いながらも、2D CADを併用しているようなユーザーもターゲットに含まれていた。分野としては、機械装置および電子機器の設計としていた。
そのことからも、CADの新機能を細かく紹介するというよりは、「SOLIDWORKS」ブランド製品を全て紹介しながら、「3Dデータ化すれば、設計から生産まで、これだけの付加価値が得られる」といった紹介に力を入れていた。
今回配布したノベルティはミントタブレットだったが、そこに新しいユーザーをつかみにいく仕掛けがしてあった。
「無料:体験版はじめました!!」「SOLIDWORKS 60分と検索して」とだけ書いてある。要は、Webブラウザ上で60分間だけSOLIDWORKSが体験できる仕組みだ。実際は、最大120分使えるという。なお利用するには「MySolidWorks」のユーザー登録が必要だ。これまではトライアルも含めて基本的に代理店経由で提供しており、このような同社が直接働きかける取り組みは初だという。2016年からひっそりと試験的に始めていたとのこと。
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