インダストリー4.0の動きの中でオークマが目指すもの:スマートファクトリー(2/2 ページ)
「日本ものづくりワールド2017」の特別講演に工作機械メーカー、オークマ 社長の花木義麿氏が登壇。IoTを活用した工場の最新事例を紹介しながら、オークマが考えるスマートファクトリーと今後のモノづくりの展望について語った。
「日本で作って世界で勝つ」
2017年3月に完成した「Dream Site2(DS2)」は、建屋面積が1万1000平方メートル、投資額は約100億円で中小型旋盤および研削機を生産する。2013年5月に完成した「Dream Site1(DS1)」が同社にとって最初のスマートファクトリーであり「『日本で作って世界で勝つ』をスローガンに、高効率向上にすれば日本でも生きていけると決断して工場を建設した」と花木氏は、当時を振り返る※)。
※)関連記事:「日本で作って世界で勝つ」――オークマが“夢工場”で描く未来とは
この経験を踏まえて新たに取り組んだのがDS2となる。2017年5月に稼働したのは部品のみを生産する部品工場だが、今後組み立てを行う組立工場についても建設する計画だとしている。
DS2部品工場には、自律化・知能化を高めたスマートマシンを採用するとともに、ロボットを駆使した自動化を推進している。また、工場制御周期の高速化、物流コントロールを行うため全ての部品にワークID(識別タグ)を装着し、部品の所在を正確に把握。加工や物流の指示を俊敏に行うなど、IoTの高度な活用に取り組んでいる。さらに、部分最適から全体的へ改善を加速するための工場全体の生産の進捗、機械の稼働状況を見える化し、データ分析をリアルタイムで実施するなど現場の改善力で日々進化する工場を目指している。
スマートマシンの価値
さらに、花木氏は「このようなスマートファクトリーを実現するには工作機械自体のスマート化の徹底が重要だ」と自社開発製品のスマート化に力を注ぐ。
その1つが工作機械の情報をできる限り、自律的に分析・判断し、熱、振動、衝突、精度などの課題を知能化技術で対応できるよう、AI(人工知能)を搭載し、機械診断を実現(AI機械診断、OSP-AI)した製品作りだ。
この知能化技術はさまざまな要素で構成される。熱変位を正確に制御するサーモフレンドリーコンセプト、加工条件検索機能である加工ナビ、サーボ制御を最適化し高精度で安定動作を維持するサーボナビ、幾何誤差を計測し補正するファイブチューニング、衝突防止機能のアンチクラッシュシステム、主軸回転速度と送り速度の同期制御を行い難削材の高効率加工を実現するシンクロドライビングなどの機能が現在提供されている。
複合加工機では、ミーリング、旋削、研削加工に焼き入れ、金属積層造形を加えた究極の工程集約を実現した超複合加工機「LASER EX」シリーズを2016年開発した。同シリーズを、マスカスタマイゼーションを支えるスマートマシンとして、また、航空機エンジン基幹部品の品質要求に応えうる積層造形技術のソリューションとして訴求している。その他、ロボットを駆使した自動化については、多品種少量の重量部品加工に取り組んでおり、素材投入から加工完了品まで、重量ワークの着脱や搬送を完全自動化した。最大可搬重量1350kgの大型ロボットを活用し、素材やワーク、治具の自動交換などを行う。
最後に花木氏は今後の日本のモノづくりの展望として「日本ならではのモノづくりの進化が必要だ。スマートマシンのさらなる進化が日本のモノづくりにさらに力を与えることなる。モノづくりの進化を実現するは、サイバーフィジカルシステムの進化、部分最適から工場最適へ、モノづくりからコトづくり、の3つがポイントになる」と述べた。さらに、スマートマシンのさらなる進化については、「熟練の技能と自動化・知能化の高度な融合」「AI搭載による自律型CNC工作機械」「レーザー応用などによるさらなる工程集約」が重要だとし、今後さらに開発を進める方針を示した。
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