樹脂フロントウィンドウで3割以上の軽量化、採用モデルは2017年秋から市販:材料技術
帝人は、電気自動車(EV)ベンチャーのGLMにポリカーボネート樹脂製フロントウィンドウを供給する。GLMはスポーツオープンカー「トミーカイラZZ」のオプションとしてポリカーボネート樹脂製フロントウィンドウを設定、2017年秋から発売する。樹脂製のフロントウィンドウが市販車に採用されるのは「世界初」(帝人、GLM)。
帝人は2017年6月19日、電気自動車(EV)ベンチャーのGLMにポリカーボネート樹脂製フロントウィンドウを供給すると発表した。GLMはスポーツオープンカー「トミーカイラZZ」のオプションとしてポリカーボネート樹脂製フロントウィンドウを設定、2017年秋から発売する。樹脂製のフロントウィンドウが市販車に採用されるのは「世界初」(帝人、GLM)。
ポリカーボネート樹脂は、ガラスの半分の重量で200倍の耐衝撃性を持つのが特徴。トミーカイラZZはポリカーボネート樹脂の強度を生かし、窓周辺部を厚くすることでAピラーを廃し、従来モデル比36%減となる6.6kgの軽量化を図った。軽量化だけでなく、Aピラーがなくなることで視界が良好になるのもメリットだという。
道路運送車両法の保安基準では、衝突時の安全確保や光の透過性、耐摩耗性などフロントウィンドウの要件が定められている。従来のコーティングを施したポリカーボネート樹脂は耐摩耗性試験での摩耗が5〜7%で、基準である2%未満に抑えるのが難しかった。
帝人はガラス並みの耐摩耗性と耐候性を確保するため、ウエット法でハードコートを施したポリカーボネート樹脂に、ガス化したハードコート材を追加する技術(プラズマCVD法)を確立。フロントウィンドウのように大型の部材にも均一にコーティングできる設備も開発した。耐摩耗性試験での摩耗は0.5〜1.5%で、強化ガラスに相当する耐摩耗性を確保したとしている。
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