乗り比べて分かった、三菱ふそうとUDトラックスの「思想」の違い:乗って解説(4/4 ページ)
三菱ふそうトラック・バスが21年ぶりに「スーパーグレート」を、UDトラックスは13年ぶりに「クオン」をフルモデルチェンジした。現場の声を踏まえて大型トラックはどう変わったのか解説する。
安全性と経済性、快適性をそれぞれ異なる方向で向上
三菱ふそうのスーパーグレートと、UDトラックスのクオン。どちらも環境性能をクリアし、さらに使いやすいトラックとするためにあらゆる要素をブラッシュアップしているのだが、それも両者では仕様が違うあたりが実に面白い。考え方の違いはAMTの制御やADASの仕様にも端的に現れている。
アダプティブクルーズコントロールは、クオンでは時速30km以上でしか設定できず、時速15km以下になるとキャンセルされてしまうのに対し、スーパーグレートは停止や発進まで行う。
オートクルーズでも燃費を向上させるために道路の勾配から走りを予測して緩やかに加速させたりする機能を両者とも備えるが、スーパーグレートは地図データをECUのメモリ内に全て書き込んでいるのに対し、クオンはGPSデータで高速道路の勾配だけを走行中に取り込み、次回の走行時に負荷の予測に用いるといった具合だ。
どちらも現場の声を取り入れ、何がベストか判断した結果、導き出された仕様である。また経済性については稼働率を高めるためのメンテナンスフリー化を進めていることも注目したい。そして静粛性が高くなっていることも、両者に共通した新型の特徴だった。
疲労を軽減して運転支援を行うことでドライバーの負担を減らし、労働環境の改善や交通事故の削減に貢献できるのが、新時代の大型トラックといえそうだ。
筆者プロフィール
髙根 英幸(たかね ひでゆき)
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。輸入車専門誌の編集部を経て、現在はフリーランス。実際のメカいじりやレース参戦などによる経験からクルマや運転テクニックを語れる理系自動車ライター。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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