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パナソニックが目指すAIの“使いこなし”とは組み込み開発 インタビュー(2/2 ページ)

パナソニックがAI(人工知能)の活用に注力する姿勢を鮮明にしている。2017年4月に新設したビジネスイノベーション本部傘下のAIソリューションセンターは、AIの“使いこなし”を進めて、従来にない新たな事業の立ち上げも担当していく方針だ。同センター 戦略企画部 部長の井上昭彦氏に話を聞いた。

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AIを適用した新たな事業化は「ためらわない」

 パナソニックのAI技術は「家電」「住宅」「車載」「B2B」の4つに領域に展開していく方針が示されている。例えば「車載」では、実績あるバックモニターと、デジタルカメラや監視カメラで培ったAI技術を融合し、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術に展開していく開発が進められている。

 こういったAI技術の適用は、基本的には既存の事業部やカンパニーが主導して事業化していくことになる。その一方で、AIソリューションセンターが率先してAI技術を適用した事業を進めていく可能性もある。

 井上氏は「AIソリューションセンターには、AI適用の新たな可能性がある事業領域を見つけていく役割もある。既存の事業部やカンパニーは、モノ売りからコト売りへの移行を進めているが、その見いだした事業領域はコト売りに移行しきれていないモノ売りの事業とカニバリズムを起こすかもしれず、新たな事業領域への取り組みをためらう可能性もある。その場合、本社側のビジネスイノベーション本部やAIソリューションセンターが責任を持ってその事業領域の事業化を進める。AI×ビッグデータの時代はスピード感が重要であり、ためらっていれば機会を失うからだ」と語る。

 2017年4月の会見で宮部氏も、ビジネスイノベーション本部の活動によって、年間売上高規模が数百億円に達する現行の37事業部と同等レベルに成長し得る事業を、数年内で複数創出していくという方針を示している。AIソリューションセンターによるAIの“使いこなし”は、新たな事業部を創出する可能性も秘めているわけだ。

「AIは製品や事業、サービスに溶け込んでいく」

パナソニックの井上昭彦氏
パナソニックの井上昭彦氏。パナソニックの本社敷地内にある「Wonder LAB Osaka」で撮影

 AIソリューションセンターがAIの“使いこなし”に注力するのは、そこにチャンスがあると判断しているからだ。井上氏は「米国のAI技術は、基礎研究やインフラという意味では確かに進んでいる。しかし、現実世界に活用したり、事業化したりという意味ではあまり進んでいない。データの発生源である『モノ』を持っているパナソニックは良いポジションにいるし、何より負けられない」と強調する。

 そこで重視しているのがAIのエコシステムだ。「常に最新で拡充されているエコシステムでなければ半年もあれば陳腐化する」(井上氏)として、ディープラーニングではほぼデファクトスタンダードになっているNVIDIAの技術を活用している。ただし、クラウドやサーバで構築したAIの機器側への組み込みについては、まだエコシステムがそろっていないという。井上氏は「本来的には、AIの学習と機器への組み込みはシームレスにつながっているべきだ。しかしNVIDIAの技術は、お掃除ロボットに組み込めるのか、クルマ特有の安全性や耐久性などの要件を満たせるのかといった観点で最適とはいえない。だからこそ、さまざまな企業から組み込みAIに関する提案が出ているのだろう」と語る。

 またAIソリューションセンターは、パナソニックにおけるAI関連人材の育成も担っている。その育成方針でも重視しているのは“使いこなし”だ。井上氏は「AIに注目が集まることにより、データサイエンティストの需要が高まっていると聞いている。しかし、当社では、さまざまな事業領域特有のドメイン知識を持つ技術者に、AIを使いこなせるように育成していく。現在は、産業としてのAIが存在しているが、今後は製品や事業、サービスに溶け込んでいくことになる。かつて、半導体メーカーは半導体の回路設計を自社ツールなどで行っており、それが強みになっていた。しかし今では、サードパーティーのEDAツールによってほぼ自動化されている。同じことがAIにも起こって自動化され、むしろドメイン知識や実装ノウハウ、独自データなどが強みを生かせるようになるのではないか」と述べている。

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