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低温で体内時計が止まる仕組みを解明、低温下で概日リズムを保つ方法も医療技術ニュース

お茶の水女子大学は、低温で体内時計が止まってしまう仕組みを数学/物理学から明らかにした。低温下ではブランコのような減衰振動で概日リズムが消失することや、共鳴現象を用いて体内時計の振れ幅を大きくできることが分かった。

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 お茶の水女子大学は2017年5月16日、低温で体内時計が止まってしまう仕組みを数学/物理学の側面から明らかにしたと発表した。同大学 基幹研究院 准教授の郡宏氏、九州大学 大学院 芸術工学研究院の村山依子氏(日本学術振興会特別研究員)、助教の伊藤浩史氏、早稲田大学 理工学術院 教授の岩崎秀雄氏らの研究グループによるもので、成果は同月15日、米科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」電子版に掲載された。

 生物を冷やすと、概日リズム(体内時計によって生じる約24時間周期のリズミックな生命現象)がなくなっていく。こうしたリズムの変化は、数学では分岐と呼ばれている。分岐理論によると、リズムがなくなる原因はリズムの振れ幅が0になる「ホップ分岐」とリズムの周期が無限大に発散する「SNIC分岐」の2つに分類できる。同研究グループは、このような数学/物理学の知見と、21世紀に開発された体内時計に関する実験手法を用いて、体内時計が低温時にどのように停止するのかを計測・解析した。

 実験には、体内時計を持つシアノバクテリアの概日リズムの試験管内再構成系を利用。室温では強いリズムが存在するが、試験管内リズムを冷やしていくと徐々にリズムの振れ幅(振幅)が小さくなっていき、19℃付近で振幅がゼロになってリズムが消失すること、これはブランコのような「減衰振動」であることが分かった。これらの結果は、ホップ分岐によって概日リズムが消失したことを示唆する。

 また、低い温度で止まってしまった体内時計にほぼ24時間のリズムで2℃の温度変化を与えたところ、共鳴現象が起こり、低温では現れないような強いリズムが観察された。つまり、これまで概日リズムがないと考えられてきた低温状態でも、わずかな温度変化があれば生物は時計を持てることを明らかにした。

 さらに、コンピュータシミュレーションでも、体内時計の振れ幅を大きくするという試みを再現できた。また、ホップ分岐では低温下で共鳴が起こるが、SNIC分岐では起こらないことも確認した。

 これらの成果は、バクテリアの体内時計にとどまらず、ヒトを含む他の生物にも共鳴現象を応用して、体内時計の振れ幅を増加できることを示唆している。例えば生活リズムに障害のある人に対し、メリハリのついたリズムを取り戻す知見を与える可能性がある。

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室温では体内時計は自律して振動するが、低温では揺れがだんだんと弱まってしまう。そこに周期的に刺激を与えれば、また揺らすことができる(クリックして拡大) 出典:お茶の水女子大学

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