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シンプルな手作り抜型とクルマ部品の樹脂化の未来人とくるまのテクノロジー展 2017

スーパー繊維の厚物シートは普通の裁断設備では抜けない。それを可能にしたのが、ハガタ屋の手作り抜型だ。でも、それ何に使うの?

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 香川県東かがわ市からやってきたハガタ屋が「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2017」(2017年5月24〜26日、パシフィコ横浜)で展示していたのは、シンプルな手作り抜型だ。ハガタ屋は、この型で日本の名だたる大企業を幾つも相手にしてきたという。


ハガタ屋の展示サンプル

 展示会の案内に「世界初」というマークがあったことについて記者が尋ねると、「ああ、他にコレを抜ける型がないんだよ」と同社代表取締役の喜岡達氏は、展示ブースの一角に目を向ける。そこにあったものは、スーパー繊維の厚物シートを歯車の形に抜いたサンプルだった。


スーパー繊維製歯車

 アラミド系などのスーパー繊維の厚物シートは、引張強度や弾性が非常に高く、かつ素材の中でさまざまな方向から繊維が入りまじるため、従来の裁断設備では加工が困難であった。同社の手作り抜型を使えば、従来の設備をそのまま用いた加工が可能になる。刃こぼれを起こすことなく、美しく裁断できるという。刃先は素材の性質に合わせて製作している。詳細は特許出願中のため明かせないとのことだが、長年にわたり培った職人の研磨技術と創意工夫がなせる業だという。

 この型は現在、自動車部品メーカーにスーパー繊維製の歯車製作の手段として提案しているということだ。スーパー繊維の厚物を歯車型に打ち抜き、樹脂を含侵させて焼き固め、さらに研削をして歯車を製作することを想定する。

 スーパー繊維を打ち抜く型そのものは展示せず、会場で配布していた資料の写真もぼやかした。「現物を見たら、分かる人には分かっちゃうでしょ? 特に、海外の人に盗まれないようにしなくちゃ、と思って。ほら、そこのブースの企業さんとかさ……(笑)」(喜岡氏)。同社は新技術の開発や特許申請に積極的だ。


「型はねぇ、実はここに持ってるんだよ。持ってきてるんだけどねぇ、フフフ」。すんごい見せたそう。でも、結局見せてくれなかった。

 スーパー繊維は、自動車業界の中で従来の金属部品を樹脂へ置き換えようという動きの中、非常に注目されている素材の1つだ。軽量化をかなえながら、強度も損なわずに済むからだ。従来、使われるとしたら多層積層の複合材の形であり、耐久性の課題が付いて回った。同社の型なら単一の厚物を一気に打ち抜けることから、そんな課題も解消できる。電装化が進む自動車など輸送機器にはギヤ(歯車)は欠かせないものとなる。歯車についても他の部品と同様に軽量化が課題となって樹脂化が進むだろう――この技術は、そんな自動車開発の現状や将来に着眼したものだという。スーパー繊維の歯車の他、同様な着眼点から同社が製作した鉄とカーボン繊維を融合させた軽量化シャフトも展示した。

 ハガタ屋は総勢8人程度の、いわゆる「町工場」だ。もともとは革製品などの抜型を製作していたという同社。「手作りの抜型」という軸は現在も変わりがないが、顧客の業界は自動車や航空機、重工にまでおよび、幅広いという。今回の展示の他にも炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の板を打ち抜くための抜型や、3D形状に打ち抜くための特殊抜型も製作している。抜型の生産はコストの安い海外へどんどん移行し、国内の同業が減りゆく中、同社は顧客となるメーカーの将来を見据えたニーズに目を向け続け、そこに挑み続けることでビジネスを続けてきた。

 自社のWebサイトやブログから、情報発信も活発にしているという。「大手メーカーのお客さんが、Webの検索から私のブログを引っかけて、よくやってくる」(喜岡氏)と、ブログ発信によるチャンス獲得の効果についても語った。

 「ウチはお客さんに必要な技術を用意するのみ。そこからどうにかするのは、お客さんの仕事だからね!」ということを喜岡氏は何度も強調し、日本の製造業が元気になることを強く願っていることがうかがえた。

人とくるまのテクノロジー展2017
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