PTCが進めるフィジカルとデジタルの融合、その時「IoTは次世代のPLMになる」:LIVEWORX 2017(2/2 ページ)
PTCの年次ユーザーカンファレンス「LIVEWORX 2017」の基調講演に同社社長兼CEOのジェームズ・E・ヘプルマン氏が登壇。「PTCの役割は、革新を生み出すフィジカルとデジタルの融合の推進にある」と語るとともに、「IoTは次世代のPLMになる」と訴えた。
Bosch Rexrothの事例を基にスマートコネクテッド製品の取り組みを説明
続いてヘプルマン氏は、Bosch Rexrothのインダストリー4.0対応油圧制御機器「CytroPac」の事例を基に、フィジカルとデジタルを融合させたスマートコネクテッド製品の取り組みについてデモンストレーションを交えながら説明した。
この説明では、PTCのIoTプラットフォーム「ThingWorx」が重視している、役割ベース(Roll-Based)のコンセプトを基に、CytroPacの開発から市場投入、サービスサポートに至るまでに関わる部署が登場する。
まず要件設計の部署では、Sumilinkモデルを使ったモデルベースのデジタルツインからCytroPacの性能要件を分析する。その結果、30%のエネルギー効率の向上が必要としつつも、コスト面からパッケージのサイズ変更もできないとなった。
この厳しい要件を受けた設計の部署では、3つの熱源を冷やす冷却プレートを3Dプリンタを用いた格子構造に変更することで、エネルギー効率を43%向上しながら、66%もの軽量化も可能になる案を導き出した。なお、格子構造に設計を変更する際に用いたのが3D CADツール「Creo」の機能「Creo Lattice」である。
次に登場した部署はデジタルチームだ。デジタルチームでは、設計開発データを営業活動に生かせるような役割ベースのアプリケーションをThingWorxで開発したり、Creoで作成した3D CADデータを使って、言語に頼らないARを活用したサービスマニュアルを作成したりしている。なお、ARを活用したサービスマニュアルの作成では、Creoのイラストレーションツール「Creo Illustration」のデータを、ThingWorxのAR作成機能「ThingWorx Studio」に直接入れ込んでいる。
また、CytroPacの3Dデータは、マイクロソフトのスマートグラス「HoloLens」を使ってARとして見ることができる。HoloLensを装着したヘプルマン氏は、実物のCytroPacの隣にARのCytroPacがあるのを来場者に見せて「これがあれば、物理的なショールームが不要になる」と述べた。
そして、製品を購入した顧客も、スマートコネクテッド製品であるCytroPacから得られる情報を活用したいと考える。ThingWorxでは、さまざまな設備や装置から出力される情報を取得するためのインタフェースとなる「Kepware」を利用できる。デモでは、CytroPacを使って動作する装置や、連動して動くABBのロボットの状態を見える化できることを示した。
隠し玉は「ThingMark」不要のAR機能「CADトラッキング」
このデモでは、ThingWorxのAR機能の進化バージョンも披露した。先述したHoloLensによるARのCytroPacは、「ThingMark」というマークの上に表示される仕様になっている。進化バージョンは、カメラで撮影した映像と3D CADデータから抽出したイラストを比較して形状を認識することによってARを表示する。ThingMarkは必要ない。「CADトラッキング」(ヘプルマン氏)と呼ぶ機能で、現在開発中である。
Bosch RexrothによるCytroPacの事例を紹介した後、ヘプルマン氏は再度「IoTこそが次世代のPLMだ」と強調した。「CAD/PLMを展開するPTCがIoTに注力する中で『正しい方向に進んでいるのか』と問われることもあったがそんなことはない。当社のこの構想は、10年後には現実のものとなっているだろう」(同氏)としている。
関連記事
- 「フィジカル」と「デジタル」が融合するIoT時代、PTCはオープン化を加速する
PTCジャパンのユーザーイベント「PTC Forum Japan 2016」の基調講演に米国本社PTCの社長兼CEOを務めるジェームズ・E・ヘプルマン氏が登壇。「IoT時代のモノの新しい見方〜現実世界とデジタル世界の収束」と題して、IoTプラットフォーム「ThingWorx」を中核とする同社の事業戦略を説明した。 - IoTで目指すべきは“体験”の拡張、PTCがARとの融合で実現
PTCの年次ユーザーカンファレンス「LIVEWORX 2016」の基調講演に、同社社長兼CEOのジェームズ・E・ヘプルマン氏が登壇。「IoTによるデジタルとフィジカルの融合によってエクスペリエンス(体験)を拡張できる。そのための手段になるのがAR(拡張現実)/VR(仮想現実)だ」と訴えた。 - IoTで生み出す“デジタルの双子”、新たに解析企業の買収なども発表
米国の大手CAD/PLMベンダーであるPTCおよび同社傘下でIoTプラットフォームを展開するThingWorxは2015年5月4〜7日(現地時間)、米国マサチューセッツ州ボストンにおいてユーザーカンファレンス「LiveWorx 2015」を開催。基調講演に立ったPTC社長兼CEOのジェームズ・ヘプルマン氏は、IoTによる産業の変化を強調するとともに、新たに解析企業大手のColdLightを買収したことを明らかにした。 - IoTがもたらす“月の陰”でもつながる価値――「戦略転換が必要」とPTC CEO
米PTCはユーザーカンファレンス「PTC Live Global 2014」を開催。基調講演に立ったPTC社長兼CEOのヘプルマン氏は、製品の形が“スマートコネクテッドプロダクト”となることにより、IoT(Internet of Things)やサービス化が進み、製造業の形が大きく変わることを訴えた。 - 製造業を揺さぶる7つの力とは?――「今こそ変革が必要」と訴えるPTC社長ヘプルマン氏
米PTCはユーザーカンファレンス「PTC Live Global 2013」を米国カリフォルニアで開催。その基調講演に立ったPTC社長兼CEOのヘプルマン氏は、製造業の変革を促す7つの大きな環境変化を紹介し「変革を促す新たな技術の採用が必要だ」と訴えた。 - 日本の製造業の伸びしろはサービス分野にある――米PTC ヘプルマン氏
PLMをもう1つの基幹システムと位置付けるPTC。同社の社長兼CEOであるHeppelmann(ヘプルマン)氏は「プロダクト」だけでなく「アプリケーション」「サービス」領域の重要性を語ってくれた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.