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重粒子線がん治療装置向けスキャニング照射機器の小型化に成功:医療機器ニュース
東芝と量子科学技術研究開発機構は、重粒子線がん治療装置向けスキャニング照射機器の小型化に成功した。機器から照射位置までの距離を3.5mまで短縮し、重粒子線向け回転ガントリーを従来の約3分の2まで小型化できる。
東芝は2017年5月10日、量子科学技術研究開発機構と共同で、重粒子線がん治療装置向けのスキャニング照射機器の小型化に成功したと発表した。同機器を回転ガントリー(架台)に搭載することで、重粒子線向け回転ガントリーを従来の約3分の2まで小型化できる見込みだという。
重粒子線がん治療装置は、炭素イオンを加速器で加速し、治療室内のスキャニング照射機器を使って患部に照射する。従来機器では、2台のスキャニング電磁石を使用し、直交する2方向にビームを走査し、患部を照射する。スキャニング電磁石は、電磁石の干渉などを避けるため、ビーム進行方向に並べて配置していた。
今回開発したスキャニング照射機器は、東芝のコイル巻線製造技術を活用し、2台のスキャニング電磁石を1台の電磁石として配置することに成功。磁場を効率良く発生させることで、照射位置までの距離を従来の9mから3.5mまで短縮化した。
また、重粒子線治療装置で使用する加速器や回転ガントリーは、大きな常伝導磁石により炭素イオンの粒子ビームを輸送・制御するため、装置が大型化する傾向があった。東芝は今後、同機器と既に開発済みの超電導偏向電磁石を用いることで、世界最小の回転ガントリーを開発し、重粒子線がん治療装置への適用を目指すとしている。
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