日本発の印刷式有機ELパネルがついに開花、JOLEDがサンプル出荷開始:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
日本発の印刷型有機ELパネルの技術開発を推進するJOLEDは、印刷型技術での量産技術を確立し、21.6型の高精細4Kパネルのサンプル出荷を開始する。JOLED 社長の東入來信博氏は「中型から徐々に市場を拡大し印刷型有機ELを10型以上の領域でデファクトスタンダードにしていきたい」と述べている。
蒸着型の届かない領域で勝負
JOLEDでは印刷型に特化する中で、2016年1月には19.3型の4K(3840RGB×2160、829万画素)試作モデルを開発し出画に成功。2016年9月には親会社であるジャパンディスプレイ(JDI)石川工場内に、パナソニックと共同で独自の製造設備を開発し、G4.5のパイロットラインを稼働させている。今回はこのラインでの製造で量産技術をほぼ確立できたことからサンプル出荷の発表を行った。東入來氏は「量産技術の確立にはほぼめどが立ち、あと1つの点について確認が取れれば、確立できたと言い切れる段階まで来た。1カ月以内に量産を開始できると考えている」と述べる。
ただ、現在蒸着型で技術が確立されている領域で勝負してもコスト競争力やスピードで勝てない。そこでJOLEDでは、「FMM-RGB蒸着法」の得意な5〜10型、白色EL蒸着法などが確立されている55型以上などの領域の隙間を狙い、20〜30型前後のハイエンドモニター領域で勝負をする考えだ。
東入來氏は「スマートフォンクラスの大きさを狙った全体的な技術開発は進めていくが、高精細化の面でまだ技術的なブレークスルーが必要でそれを重視するように傾斜をかけた開発は進めていくことはない。パネル市場を見た時に、まだ有機ELがカバーできていない領域があり、中型市場で印刷型有機ELの価値を示していくことがまずは重要だと考えている。その後はアライアンスなどを含めて拡大を進めていく」と方向性について述べている。
サンプル出荷先は医療向け、既にソニーが採用
今回サンプル出荷を行うのは、21.6型 4Kの高精細 有機ELパネルで、まずは医療用モニターとして展開する計画だ。画素数は3840×2160、204ppiで、ピーク輝度は350cd/m2、コントラスト比は100万:1となっている。既に、ソニーが医療用モニターとして試作する計画を示している。サンプル価格としては「顧客先によって条件が変わるので一概にはいえないが、1台当たり60〜100万円の間くらい」(東入來氏)としている。
当面の生産はJDI石川工場内のパイロットラインで行う計画。同生産能力の生産能力は1カ月当たりでガラス基板の投入枚数が2300枚で、21.6型パネルの3面取りとなっている。この中で試作用や開発用のパネル生産なども行っているため、生産能力はまだまだ少ないといえる。今後は生産パートナーなども含め、アライアンスなどにより生産能力を高めていく方針である。
有機ELパネルの印刷方式での生産技術については大きな注目が集まっており、当面の競合企業でもある韓国のサムスン電子やLG電子などとの協業についても「JOLED側から門戸を閉ざすものではない」(JOLED 管理部門 経営企画グループ シニアゼネラルマネージャー 加藤敦氏)としている。ただ、日本連合という企業の成り立ちを考えると現実的には日本企業との協業が優先事項となる見込みだ。
また、日本企業にとっては大きな投資が継続的に必要なパネル事業はリスクが大きいと見られているが「パネルベンダーとしてだけの展開ではなく、印刷型の有機ELパネル技術の会社として、印刷型技術が10型以上の有機ELのデファクトスタンダードとなるような幅広い取り組みを進めていきたい。そのためには製造設備やインク材料、ノウハウ、関連デバイスなども含めて外販していく」と事業の方向性について述べている。
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