クルマの価値は「思い通りの走り」だけでなく「いかに安全に賢く走るか」:TECHNO-FRONTIER 2017 基調講演(3/3 ページ)
これまでは人の思うように操れるのが最高のクルマだったが、今後はいかに安全に賢く走るかという新たな価値が加わる――。トヨタ自動車 専務役員の伊勢清貴氏が、自動運転の実現に向けた取り組みを振り返った。
自動運転はチームメイト
自動運転はこうした運転支援技術の進化の先にある。自動運転を実現するコア技術は人工知能、通信技術そして交通データというビッグデータの活用などだ。伊勢氏は「これまでは人の思うように操れるのが最高のクルマだったが、今後は運転支援技術を用いて、いかに安全に賢く走るかという新たな価値が加わる。その結果、これまでの車と異なる形になる可能性もある」と指摘する。
自動運転を行うためには、自分の位置を正確に把握して、その先の安全な経路を探し、走行することが必要となる。高精度のセンサーを用いて自分の位置は±10cmまで高めることが必要であり、情報も古いものでは役に立たないため、変化する道路情報も通信によって受け取っていく。
トヨタ自動車は、これまで取り組んできた自動運転の考え方を「Mobility Teammate Concept」と命名し、広く使用している。「Mobility Teammate Concept」とは、人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係を築くトヨタ独自の自動運転の考え方である。
トヨタ自動車が2020年頃に実用化することを目標に、現在開発を進めている自動運転実験車「Highway Teammate」は、2015年秋に首都高速道路での合流、車線維持、レーンチェンジ、分流を自動運転で行うデモ走行を実施した。
ドライバーによる周辺監視が不要となる高度な自動運転システムには人工知能(AI)技術が重要な役割を果たす。AIの活用を含めた先端研究、商品企画を目的として、2016年にToyota Research Institute(TRI)を設立した。この研究所では「事故を起こさないクルマ」をつくるという究極の目標に向け、クルマの安全性を向上させることとともにAIや機械学習の知見を利用し、科学的・原理的な研究も進めている。
また、Microsoft(マイクロソフト)と共同で新会社「Toyota Connected(トヨタ・コネクティッド)」を設立し、市場で走行する車両から得られる情報の集約と解析、その結果の商品開発への反映にも取り組む。
最後に、伊勢氏は自動運転実現に向けて今後の課題を紹介した。その1つが社会的課題だ。「例えば事故が起きた時に、誰の責任とするか決めておく必要がある」という法規上の責任の所在である。そして、自動運転の社会受容性の醸成が最も大きな取り組むべき課題となるという見解を示した。
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