2年連続の減収減益を見込むトヨタ、「これが等身大の実力」:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車が2017年3月期(2016年度)の通期決算を発表した。売上高は前年比2.8%減の27兆5971億円、営業利益は同30.1%減の1兆9943億円、当期純利益は同20.8%減の1兆8311億円で減収減益となった。2018年3月期(2017年度)も減収減益となる見通しだ。
トヨタ自動車は2017年5月10日、東京都内で会見を開き、2017年3月期(2016年度)の通期決算を発表した。
売上高は前年比2.8%減の27兆5971億円、営業利益は同30.1%減の1兆9943億円、当期純利益は同20.8%減の1兆8311億円で減収減益となったが、2018年3月期(2017年度)も減収減益となる見通し。2016年度の業績と比較して、売上高は0.4%減の27兆5000億円、営業利益は同19.8%減の1兆6000億円、当期純利益は同18.1%減の1兆5000億円を計画している。
2017年度の販売台数は、アジアやオセアニア、アフリカなどで増加を見込むが、新型車効果が一巡するため日本や北米で減少するため全体では前年を下回る。また、想定為替レートを円高に設定した影響や、原材料価格のコストアップ、北米での販売諸費用の増加などにより営業利益が減少する。想定為替レートは1ドル=105円、1ユーロ=115円。
為替の追い風も向かい風もない中で
会見に出席したトヨタ自動車 社長の豊田章男氏は「今回(2016年度)の決算は、為替の追い風も向かい風もない中で、まさに現在の等身大の実力が素直に表れた」とコメントした。
2016年度の連結販売台数は北米で前期並み、中近東で大幅減だったが、新型車が好調な日本や欧州、インドネシアやフィリピンで増加した結果、前年比29万台増の897万台となった。地域別に見ると、日本では21万台、欧州で8万台、アジアでは24万台増えた。
営業利益は、原価改善や販売面の努力で為替影響を除くと1200億円増加したが、為替が円高で推移したことにより減益となった。為替変動の影響は、輸出入などの外貨取引を含めて9400億円に相当する。
トヨタ自動車 副社長の永田理氏は「これが等身大の実力だと思うと悔しい。収益向上策を強力に推進して最大限の挽回に努める。クルマを作る人も売る人も、もっと賢くお金を使うように徹底する。他社の製品やアライアンスから学んだ物差しに照らすと、まだやれることがある。カンパニー制やTNGAをフルに活用して競争力を磨き直し、良いクルマづくりを強化していく」と説明。豊田氏も「(2017年度の決算で)2期連続の減益となるのは連敗」と述べた。
「賢くクルマをつくる」ことについて豊田氏は、TNGA(Toyota New Global Architecture)を通じて「もっといいクルマづくり」が技術開発と生産技術、生産現場に定着してきたと実感する一方で、まだ改善の余地があるという。
「性能や品質の競争力向上を優先し、コストやリードタイムを後回しにしていないか。“適正販売価格−適正利益=あるべき原価”という基本原則を徹底的に突き詰めているか。これらのことからお客さま目線のクルマづくりが実践できていないという強い危機感がある」(豊田氏)
これに対し、手本となるのはコンパクトカーだとしている。コンパクトカーはボディーサイズや排気量、価格に制約がある中で快適さや安全性を実現しなければならない。カンパニー制においてコンパクトカーを担当するカンパニー同士が互いをベンチマークとしながら賢いつくり方を追求し、より大きいクルマを担当するカンパニーとも切磋琢磨することを狙っている。
1兆円規模の投資
2017年度の研究開発費は前年比125億円増の1兆500億円、設備投資は同882億円増の1兆3000億円を見込んでいる。設備投資の増加はTNGAの新モデルへの切り替え投資によるもの。
今後も必要な投資については「十分にやっていく」(永田氏)という方針だ。人工知能や自動運転技術、ロボティクス、コネクテッドなど新しい領域がパラダイムシフトの鍵を握るとし、将来につながる技術力を育てていくことが必要となるためだ。「種まきの原資をいかに稼ぐかに注力していく。ビジネスの芽を育てるには一層の戦略的投資が必要だ。それを実現できる強靭(きょうじん)な収益体質に向けて強化する」(永田氏)。
また、豊田氏は「1兆円規模の投資を継続することは、ステークホルダーも含めて持続的に成長するための責務。ただ、売り上げがなかなか増えない中で利益を生まない分野に投資していくのは難しい。何かをやめるか、変える決断が必要になる」ともコメントした。
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