「解析と実測のコリレーション」で自動車用コネクターの開発期間が3分の1に:CAE事例(2/2 ページ)
コネクター大手のヒロセ電機は、研究開発拠点の横浜センターに新たに「EMC試験室」を導入。EMC試験室と解析技術の組み合わせによって、自動車向けコネクターの開発期間を従来比で3分の1程度に短縮し、製品投入を加速させていく考えだ。
「“スーパーティア2”を目指す」
これまで横浜センターでは、自動車向けコネクターを設計する一方で、そのノイズ関連の評価試験は社外サイトを使って行っていた。しかし「長い場合だと半月〜1カ月待ちということもあった。横浜センター内にEMC試験室を導入したことにより、この待ち時間を短縮できる」(ヒロセ電機 取締役 技術本部 副本部長 兼自動車事業部長の岡野広明氏)という。なお、EMC試験室導入のための投資金額は数億円にのぼる。
ただし、自動車向けコネクターの開発サイクルを従来比で3分の1程度に短縮するという目標は、単に横浜センター内にEMC試験室を導入するだけで実現できるものではない。解析技術との組み合わせが重要な役割を果たしている。ヒロセ電機では「解析と実測のコリレーション」と呼び、解析専任の技術者を置いて取り組みを進めているところだ。
解析を担当するヒロセ電機 技術本部 SB事業部 解析課副参事の吉田智氏は「設計の初期段階における解析は、試作開発の手戻りを減らすとともに、短期開発を実現する上で極めて重要だ。そして、EMC試験室内での測定結果と解析パラメータの相関関係(コリレーション)を見ていく中で、解析モデルを簡素にして解析の作業や解析に掛かる時間を短縮できれば、開発期間をさらに短縮できる」と説明する。
解析環境については、CSTやANSYSといった電磁解析で広く利用されているソフトウェアに、自社開発のツールも組み合わせて運用しているという。
岡野氏は「EMC試験室、そして解析と実測のコリレーションによって、コネクターだけでなく最適なワイヤハーネスの提案なども行えるようになってきた。実際に、自動車のアンテナ関連では大手自動車メーカーと直接やりとりするようになっている。よりティア1サプライヤーに近い“スーパーティア2”を目指したい」と述べている。
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