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「IoT導入の壁」を乗り越える「IoT導入計画」とは先行事例から見る製造業の「IoT導入の壁」(後編)(3/3 ページ)

先行事例から抽出したIoT導入に向けた整備事項となる「IoT導入の壁」を前後編に分けて解説する。後編では、「IoT導入の壁」を乗り越える「IoT導入計画」について、「IoT活用の発展ステージ」と「IoT活用シナリオ」に分けて解説する。

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IoT導入計画の要諦とは

 それでは、「IoT活用シナリオ」として自社のIoT活用のアイデアを具体化さえすれば「IoT導入計画」は完成するのであろうか。ここで問題となるのが、そのアイデアが「IoT活用の発展ステージ」のどのステージに位置しているかにある。

 そのアイデアがステージ1にある場合、確かに今は実現可能な「やれること」となるだろうが、通常は十分な経営効果に結び付かず、IoT活用に向けた投資の十分な説明にならないことが多い。

 一方で、いきなりステージ3を目指した場合、確かに期待される成果は大きいものの、「IoT導入の壁」から明らかとなった膨大な整備事項を前にして、現場がついて来ないというジレンマに陥る。

 このことからも、「IoT導入計画」を描く上では、IoTを活用して「やりたいこと」と今「やれること」を区別し整理することで、まず着手できる短期的テーマ(やれること)と、最終目標実現に向けた中長期活動(やりたいこと)をIoT活用の発展の道筋(ロードマップ)として描き、計画全体で投資対効果を見ていくことが重要となる。これを図示したものが図5のイメージとなる。

図5
図5 IoT導入計画策定の要諦(クリックで拡大) 出典:日立コンサルティング

 例えば、図4での「⑥生産性・品質の原因分析による、工場設備設定の最適化」のような早期に効果が見込まれる短期的テーマを「やれること」としてまずは着手し、徐々にIoTデータ取得範囲を拡大しながら、「⑤製造実績・進捗/在庫情報から、供給能力のリアルタイム分析」で工場の見える化の精度を上げ、最終的には「④生産能力融通によるSCM計画の最適化」を「やりたいこと」として実現していくようなIoT活用のロードマップを描いた「IoT導入計画」になるだろう。



 以上、前後編に渡り、IoT活用に向けての必要な「整備事項」を抜け漏れなく検討するためのフレームワークである「IoT導入の壁」と、それを活用しつつ効果的な「IoT導入計画」を作るためのポイントについて解説してきた。

 今後、多くの製造業でIoT活用の取り組みが具体的に行われ、それによってIoTが単なるバズワードで終わらないようになることを願っている。

プロフィール

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久野 俊一(ひさの しゅんいち)株式会社日立コンサルティング 産業コンサルティング本部 シニアマネージャー

外資系大手コンサルティング会社2社でプロジェクトマネージャー/SCMスペシャル・マター・エキスパートとして活動した後、2010年に日立コンサルティング入社。SCM計画領域のエキスパートとして、数々のグローバル製造業の改革支援コンサルをプロジェクトマネージャーとして担当。2014年度からは日立コンサルティング所属本部の「IoTを活用したモノづくり変革とサービス化」プロジェクトの中核メンバーとして参画。「IoT構想策定コンサルティング」手法の開発を担当。生産領域を中心としたスマートファクトリーなど、IoT構想改革に日立社内外で参画。

株式会社日立コンサルティング
http://www.hitachiconsulting.co.jp/

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