空に安全な道を作れ、東電とゼンリンが目指す「ドローンハイウェイ構想」とは:ドローン
東京電力ホールディングスとゼンリンは新たに、ドローンが安全に飛行できる“空の道”を作る「ドローンハイウェイ構想」を提唱し、実現に向けた業務提携を行うことを発表した。東電の電力インフラ網をドローンの飛行路とする構想だ。
東京電力ホールディングス(以下、東京電力HD)とゼンリンは2017年3月29日、ドローン(無人航空機)の安全飛行をインフラ側から支援する「ドローンハイウェイ構想」の実現に向けて業務提携を行うことを発表した。
「空の道」を作る「ドローンハイウェイ構想」
両社が提唱する「ドローンハイウェイ構想」とは、ドローン(無人航空機)が安全に飛行できる「空の道」を作るというものだ。
ドローンは、労働人口減少や少子高齢化などの問題に対し、測量や点検、農薬散布、配送、救急医療、災害対応、警備などの領域で、活用が期待されており、政府の「日本再興戦略2016」などの中にも活用が明記されている。内閣府「小型無人機に関わる環境整備に向けた官民協議会」では、2018年には離島や山間部での宅配ドローンを実現し、2020年には市街地でも活用を進めることが期待されている。ただ、一方で、落下や衝突事故などが多発し安全性の面で不安が高まっており、飛行禁止区域の制定などルール整備が急速に進められている状況である。
ドローン関連の2020年の市場規模は2015年の10倍の1000億円以上になる見込みだが、市場拡大を促進するには、こうした安全性を確保しつつ利用を進める仕組み作りが必要になる。こうした状況を解決するために、東京電力HDとゼンリンが取り組むのが安全な空の道を作る「ドローンハイウェイ構想」である。
今回の提携では、東京電力HDが持つ変電所や送電鉄塔、電柱、架空送電線などのインフラデータと、ゼンリンが開発を進める空域情報を3次元化した「空の3次元地図」を組み合わせて、安全な空の地図を作るというもの。ゼンリンは日本全国の99.6%をカバーする住宅地図を保有しており、建物情報などを含めた3次元地図の作成を進めている。一方で、東京電力HDは関東圏を中心に約5万基の送電鉄塔、約1万5000kmの送電線、約590万基の配電柱、約33万8000kmの配電線を備えている。この東電HDの持つ電力インフラ網をドローンの道にする。
ゼンリン 上席執行役員 第二事業本部長 藤沢秀幸氏は「安全飛行に必要な条件には、機体情報、気象情報、通信環境、地図情報の4つがあるが、現状では必ずしも満たされているわけではない。現実的な課題として、飛行ルートが分からない点、飛行障害となる鉄塔や電線、建物が分からないという点、バッテリー問題で長時間飛行できないという点がある。ドローンハイウェイ構想によりこれらの課題を解決する」と述べる。
具体的には以下の3つの取り組みを行う。
- ドローンの飛行障害となるインフラ情報の3次元化(2017年度)
- インフラ設備点検に必要な誘導プラットフォームの研究開発(2018年度)
- 充電設備を持つドローンポートの開発(2019年度)
「ドローンポートは自動車でいうガソリンスタンドのような存在で、ドローンの充電の他、整備や定置用などで活用することを検討している」と東京電力HD 新成長タスクフォース事務局長 山口浩一氏は述べている。今後3年間の研究開発を進めながら、2019年度には実サービスを展開する計画である。
「東京電力以外の電力会社とも組む」
収益モデルについては「話し合いを開始したばかりでまだ決まっていない」(山口氏)としているが、イメージとしては「ドローンの基本システムに組み込み、使用料を取る方式」「ナビゲーションなどの課金モデルと同様の仕組み」「ドローンポートの利用料」などで収益を確保する計画だという。
2社以外の協業については「今回は2社で開始し使用するインフラも東京電力管内の電力インフラ網を活用する。ただ今後使われるインフラを目指した場合、東京以外の電力会社やガス会社、通信会社、鉄道会社などに参加してもらった方がよいものになるのは明らか。より多くの連携先と協議していく」と山口氏は述べている。
さらに、現状では飛行禁止区域の設定など「ドローンハイウェイ構想」の技術的な課題をクリアしたとしても、規制面での障壁は残る。これについては「今はドローンハイウェイ構想で空の道が作れたとしても、飛べない地域がある。これを減らしていかないと事業化は難しい。そのために政府などが取り組んでいる実証実験に積極的に参加して、成果を出していくことが必要だと考えている。理解を得て、法制度を変えていくことを目指す」と藤沢氏は意欲を示している。
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