IoT時代で重要性が増すタギング、サトーが狙う「最後の1cm」:製造業IoT
自動認識ソリューションを展開するサトーホールディングスは、2017年1月に買収を完了した英国DataLaseとの相乗効果による新たな事業戦略を発表した。
自動認識ソリューションを展開するサトーホールディングスは2017年3月10日、2017年1月に買収を完了した英国DataLase(データレーズ)との相乗効果による新たな事業戦略を発表。従来の自動認識関連を含む、人・モノ・情報の「最後の1cm」をつなぐ事業を強化していく方針を強調した。
サトーホールディングスは1940年創業の老舗企業で自動認識ソリューションを主力事業として展開している。可変情報ラベルで世界1位、バーコードプリンタで世界2位のシェアを持つ。
サトーホールディングスの代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの松山一雄氏は「サトーホールディングスの現在の主力事業はデータコレクションとラベルで自動認識を実現する自動認識ソリューション事業だが、コアコンピタンスとなっているのは情報とモノを一致させる“タギング”である。IoT時代であらゆるモノがつながり、ネットワーク上のデータとして認識される中、こうしたモノの全てを誰かがタギングしなければならない。こうしたタギングの領域で力を発揮していく」と戦略について述べている。
さらにタギングによって獲得したデータの活用として期待するのが2017年1月に買収したデータレーズとの相乗効果である。
レーザーの感熱により文字を印字する
データレーズは1988年創業の研究主導型ベンチャー企業。同社が開発したインラインデジタルプリンティング(IDP)は、特殊な発色顔料をコーティング剤として塗布することで、さまざまな物を感熱素材に変えることのできる技術だ。コーティング剤を塗布した部分にレーザーマーカーで熱を加えることで発色させることができる。コーティング剤を塗布しておけばさまざまな素材のものにレーザーマーカーで直接印刷が行えるようになる。
特徴となるのは、商品にダイレクトに印刷ができる点と、従来の印刷方法やラベルと比較して印刷スピードが早い点だ。また、既存の印刷設備をそのまま使えるため初期コストを抑えられる他、レーザーによる印字となるため、インクジェット方式などのようなメンテナンスが不要となり運用コスト面も抑えられる。
印刷スピードは、最高で1秒に約80インチ(2032mm)まで可能。通常の生産工程に組み込んだ場合、ほとんどのラインで生産スピードを緩めずに導入可能な性能を持つ。テープなどの表面に全てIDP顔料をコーティングした場合、レーザーマーカーの制御によりラインを止めずに印字内容を変更することなども可能だ。現状では、白黒などの単色の表現のみだが、2019年頃にはフルカラーバージョンの商用展開も開始する予定だという。
データレーズ 最高マーケティング責任者 マーク・ネイプルズ氏は「既に多くの海外ブランドでも採用も進んでいる。スポーツイベントの大会の結果をすぐに製品パッケージに反映させるような使い方ができ、従来のニーズや好みを満たすだけのマーケティングではなく、情緒的なつながりを演出するマーケティングに活用することなども可能だ」と述べている。
サトーホールディングスとデータレーズは、買収に先行して2015年に資本業務提携を結んでおり、共同の販売会社なども設立していた※)が、その成果について松山氏は「現状はまだ、市場開拓を行っている途中だ。ただ、新しい技術はの関心は非常に強いと感じている。実際にビジネスで展開する場合、パッケージやインクとコラボレーションが必要になり、時間がかかっている。しかし、国内においても最初の大型導入事例はそのうち出てくる」と自信を見せている。
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今後に向けては「自動認識ソリューションに加えて、消費者向け高エンゲージメントパッケージ分野への展開を強化し、2021年度にはグローバルで売上高250億円、営業利益率30%を目指す」と述べている。
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