ディープラーニングで画像認識をお手軽に、狙いは製品検査含む「3M領域」:人工知能ニュース
NTTコムウェアは、ディープラーニング技術を活用した画像認識プラットフォームを発売する。製造業の製品検査工程などでの活用を目指す。2017年度の売上高は5000万円を目指している。
エヌ・ティ・ティ・コムウェア(以下、NTTコムウェア)は2017年2月28日、ディープラーニング(深層学習)技術を活用した画像認識プラットフォームを発売すると発表した。2017年3月1日から販売を開始する。
ディープラーニングの商用サービスを開始
NTTコムウェアでは2013年からディープラーニングの研究を開始し、2015年2月から研究と並行して試行販売も行ってきた。2015年2月には不適切コンテンツの自動フィルタリングのトライアルを行った他、2016年11月にはAI(人工知能)技術を活用した道路不具合検出システムを発表。これらで得た知見を生かし、2017年3月1日からディープラーニング技術を活用した画像認識プラットフォームの販売を開始する。
NTTコムウェア 品質生産性技術本部 ネットワークインテグレーション事業部 担当部長の佐々木秀紀氏は「今までの発表はどちらかといえば技術発表の要素が強かったが、今回は本格的な商用サービスの発表であることが違いだ」と述べる。
同社のディープラーニング活用画像認識プラットフォームの特徴は、簡単に独自AIが構築できる点、API(Application Program Interface)を通じて他のシステムと連携できる点、学習が早い点の3つの特徴を持つ。佐々木氏は「特に学習速度については独自の特許も取得しており、AIの試行錯誤の短期化を図る工夫が盛り込まれている」と述べる。
基本的な構造としては、学習機能と判定機能の2つの要素に分かれて構成されており、学習機能側には既にNTTコムウェアが独自設定した基本画像セットを学習している状況で、さらにユーザー機能が活用したい業務に合わせた画像を使って学習する。これによって判断基準を作り出し、そのアルゴリズムを使って、入力される画像データに対し判定を行うという仕組みだ。
製品としては、年間ライセンス契約でユーザーが保有するサーバにインストールする「インストール版」と、月間利用料で全てのデータをクラウドに保有して行う「クラウド版」を用意する。「インストール版」は2017年3月1日から発売。価格はリスト価格で500万円(税別)から。「クラウド版」は2018年3月期(2017年度)の第1四半期にリリース予定としている。価格は未定だ。
ターゲット市場は「3M」
同社では、製品のターゲット領域として「3M」とする3つの領域を位置付けている。「監視・検閲(Monitoring)」「保全・点検(Maintenance)」「製品検査(Manufacturing)」である。
製造業向けでは、画像を利用して工場の製品ラインなどで不良品を検出する「製品検査」領域での活用などを想定する。従来は専門家が目で検査していたり、一部の製品の抜き取り検査で対応したりしたが、ディープラーニング活用画像認識技術でこれを代替しようという提案だ。佐々木氏は「現場の技術者の後継者不足や労働者不足などがある中、ディープラーニング活用画像認識プラットフォームにより一次的にフィルタリングを行い、最終的に判断に迷ったものだけを人手でやることで効率性を大きく高められる」と用途について語る。
販売に向けては、今回のディープラーニング活用画像認識プラットフォームを組み込んだ製品開発を行うソリューションパートナーと、取次販売を行う販売パートナーの2種類を募集し、パートナー経由の販売を強化していく。佐々木氏は「現状では、監視向けや保全向けなどのパートナーはいるが、製造系のパートナーはまだ少ない。業界知識があり既に製造業向けでサービスを展開している企業と組んで共に画像認識ソリューションを展開できるようにしていきたい」と述べている。
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