工場のIoT活用、「データを外に出したくない」をどう乗り越えるか:スマートファクトリー(2/2 ページ)
日本システムウエア(NSW)、PTCジャパン(PTC)、日本ヒューレット・パッカード(HPE)の3社は、生産効率化や予防保全といった生産現場のIoT(モノのインターネット)活用を工場の中で実施できる「ファクトリーIoTスモール・スターター・パッケージ」の販売開始した。価格は月額で50万円からで、初年度の販売目標は10社を計画している。
PTC 執行役員 専務の宮川公延氏は「NSW、PTC、HPEの3社には、顧客のIoT活用における成功体験が多数ある。それらの成功体験を分かりやすい形で示したのが、今回のパッケージになる」と述べる。HPE IoT推進室 室長の岡田和美氏は「2016年10月に発表したエッジコンピューティングの製品群によって、データを社外に持ち出したくない製造業の顧客に、生産現場に閉じた形でIoT活用の価値を知ってもらえるだろう」と意気込む。
また、NSWによる導入コンサルティングと開発者向けトレーニングは、約1カ月の立ち上げ期間の後に、顧客自身の手でIoTシステムの追加開発や機能向上などを行えるようにすることが最大の目的となる。竹村氏は「最初の1カ月は、当社のIoTに関するノウハウを持ったエンジニアをフルに活用していただく。これで、第1ステップに当たる見える化までの成果は出せるだろう。ただしその後は、顧客の手で自身の思うようにIoTシステムを開発していただけるよう支援する形になる」と説明する。
製造業の顧客に対するメッセージ
今回の3社によるパッケージは「工場でのIoT活用をやりたい、という引き合いが増えている。それらの引き合いに対するメッセージの意味も込められている」(宮川氏)という。想定顧客は年間売上高で1000億円前後の製造業であり、月額50万円、年間で600万円という価格設定も想定顧客に合わせたものだ。
10社という年間販売目標はあまり高いとはいえない数字だが、「今回のパッケージの発売によって、3社それぞれにさまざまな引き合いがくることを期待している」(竹村氏)という。宮川氏が言うように、製造業の顧客に対するメッセージの意味合いがかなり強いといえそうだ。
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