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収益不問で投資とリソース活用は自由? 放任主義が生むイノベーションイノベーションのレシピ(3/3 ページ)

コニカミノルタには、イノベーションのために放任主義が貫かれた部署がある。立ち上げは社外の人材によって行われ、投資や社外との共同開発を自由に行う裁量が与えられている。設立3年にして、新規サービスの開発という目標に向けた活動が製品として形になり始めている。

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5カ所に拠点を置いた意味と成果

シリコンバレーのビジネスイノベーションセンターで開発したスマートオフィス向けロボット
シリコンバレーのビジネスイノベーションセンターで開発したスマートオフィス向けロボット(クリックして拡大)

 東京、シリコンバレー、ロンドン、上海、シンガポールに拠点を分けた成果も出ている。「イノベーション、ベンチャー企業というとシリコンバレーがイメージされがちだが、われわれは各地域に取引先があるし、地域によって風土や事業環境も異なる」(市村氏)ためだ。

 「例えば、事業化のステージにある製品のうち、スマートオフィス向けソリューション『WorkPlace of the Future』のロボットはまさにシリコンバレー的な発想で生まれたものだ。彼らは、サクサクっと作ってカスタマイズし、クラウドで管理するようなアイデアを具体化するのが得意だ。シリコンバレーでは、スタートアップで働いていた人など、現地のコミュニティーにネットワークを持った人が来てくれているのもありがたい」(市村氏)。

規制が厳しいシンガポールで、病院で実証実験を行いながら開発した創傷測定・観察ソリューション
規制が厳しいシンガポールで、病院で実証実験を行いながら開発した創傷測定・観察ソリューション(クリックして拡大)

 「シリコンバレーはスピード第一で、標準化をにらんだ取り組みを後回しにしがちだ。標準化を前提に動くのが得意なのはロンドンのメンバーだ。英国はEUの中でもスタートアップ向けの投資が集中しており、ISOなど標準化の情報も入りやすい。製品をデファクトにして収益を拡大しようという発想で議論している」(同氏)。

 「地域に根付いているからこそできることもあった。シンガポールで開発し特許出願中の創傷測定・観察ソリューションは、当局と交渉して規制を緩めてもらい、実際に病院で実証実験を行いながら開発することができた。ISO準拠の医療機器でなければ病院に導入することができないという規制があったが、高度な治療を行っている病院での実証実験が認められた」(同氏)。

コニカミノルタのエクタ・サハシ氏
コニカミノルタのエクタ・サハシ氏

 ビジネスイノベーションセンターは多様な人材が集まり、案件の進み方も異なるため、人事評価は簡単ではないようだ。「やってみて失敗したことや、そこから何を学んだかを重視している」(ビジネスイノベーションセンター シリコンバレーのセンター長であるエクタ・サハシ氏)。「初期は情熱が必要だが、製品化が近づけば量産技術が求められるように、案件の進捗段階によって重要なスキルは変化する」(波木井氏)。

 どの拠点でも、定量的・定性的な目標を立て、それをセンター長とメンバーが面談で確認、人事評価に反映させているという。コニカミノルタ本体の人事評価体系とは別扱いとなっている。

 従来の技術開発や製品開発とは逆方向で、顧客起点で新規の事業開発を行うという狙いは、組織の設立3年で実際の案件が動き出していることからも一定の成果が出ているといえるだろう。社外の人材が仕掛け始めたイノベーションではあるが、コニカミノルタの一部として定着も進んでいる。次の3年で市村氏は、「IoTや人工知能(AI)技術を活用し、コニカミノルタならではの差別化要因を探していきたい」としている。

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